アベル役のマーク・ライランスはこの作品でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされオスカーを手にしています。
初老のどこか闇を抱え、全てを悟った様な佇まいのアベルを見事に演じています。
マークライランスをこの作品で知ったという人も多いかと思いますが、それまでは舞台俳優として彼は数々の賞を手にしています。
トニー賞は3度、オリビエ賞は2度受賞しています。
また、スピルバーグはマークライランスの演技を気に入りこの作品の撮影2日目にして次作の『ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』の主演をオファーしたそうです。
そしてその後も立て続けにスピルバーグ作品に出演し続けている事を見ると、スピルバーグはよほど彼の演技に惚れ込んだ事が伺えます。
ドノバンは民間弁護士なのか?
ドノバンはアベルの死刑宣告が妥当という世論の中で自宅が銃撃されるという恐怖に脅かされながらも、アベルの弁護を辞めようとはしません。
そして裁判長に対し生かしておけば、今後ソ連とスパイ交換が必要になった時に使えると説得しアベルは懲役30年の刑を受けるのです。
ドノバンはもともとは保険を専門とする弁護士です。
ここで「保険」を米国に掛けさせる事でアベルの命を救う事ができたという交渉術が本業である保険にかけられているとも思えます。
保険専門弁護士というのは史実に基づいているのか、スティーブンなりの脚色なのかは謎ですがこれが数年後に大きな結果をもたらすことになります。
史実からみるドノバン
先述したようにこの作品は史実を元に作られています。
実際に米ソ冷戦下の1962年、米国で逮捕されたソ連のスパイとソ連領空で撃墜され拘束された米偵察機U2のパイロットがベルリンの橋の上で交換されています。
ではそもそもなぜ、保険案件を専門とするドノバンがアベルの弁護士に推薦され選任されたのか気になりますが、はっきりとした明記はありませんでした。
しかし、ドノバンという名前で同じくアイルランド系移民でCIAの創設者と言われるウィリアム・ドノヴァンという人物がいました。
ウィリアム・ドノヴァンは1883年ニューヨーク州生まれで、元弁護士で軍人だった彼は「インテリジェンスの父」とも呼ばれていました。
歳やルーツから見ても何かしらの繋がりがあったのでは?とついつい憶測したくなります。
ドノバンはなぜアベルの弁護に尽力したのか
ドノバンは家族を危険に晒しながらも『正義は皆に平等である』という彼の信条を崩さずアベルの弁護を行っていきます。