もしも自分が本郷に戻れていたら、自分の口でみすずへの思いを伝えたことでしょう。
その時はみすずに見つけてもらわなくてもいいのです。
しかし自分が戻れない場合、何らかの形でみすずに思いを伝えたいと思っていたと読み取れます。
岸は自分が本郷に戻れないことを薄々感じ取っていたのかもしれません。
切ないラブストーリー
『初恋』はそのタイトルの通り、三億円事件を絡ませながらも切ないラブストーリーとなっています。
三億円事件の捉え方
本作で語られている三億円事件の犯人像はフィクションです。
自称犯人を名乗る者の告白本が出ていますが、三億円事件の真相はまだ解明されておらず、様々な作品で映像化されています。
劇中では、社会への反抗という目的で取り上げられていました。
三億円事件を学生たちの青春の断片としたのです。
ラストシーンが物語るもの
劇中ではそれぞれが抱える苦しみを、犯罪を共に犯すことで緩和させています。
しかしラストシーンで語られた仲間たちの結末は、決して幸せなものではありません。
暴力にまみれた時代の結末をみるようなラストです。
そして岸とみすずの未来を観る者の解釈に任せて幕を閉じています。
時効をむかえたというナレーションは、岸とみすずの再会を意味するものなのでしょうか。
実際の三億円事件
劇中で取り上げられていた三億円事件は、1975年12月10日に時効となった事件です。
完全犯罪で暴力的要素が何もないというシチュエーションは、映画の中でも上手く描かれていました。
マスコミの報道被害を受けて後年自殺したした人物や、捜査の過労で殉職した警察官2名が存在する
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/三億円事件
しかし実態は上記のように、様々な罪なき人を苦しめています。
凶悪犯罪でも、暴力的要素のない犯罪でも重さは変わらないのではないでしょうか。
犯罪というもの美化してしまう本作に疑問を感じる意見もあるようです。
初恋の中に存在価値を見つけたみすず
様々な意見の交差する『初恋』は観る者によって受ける印象が違います。
リアルな時代背景と強い意志を持った学生達、そして存在価値を見出せないみすずが対照的に描かれていました。
激動の時代に生きたみすずにとって初恋と犯罪は同じものだったのではないでしょうか。