やりたくても出来ない、そんな時人は想いを強く募らせていきます。
恵まれた時代と不遇な時代、芸術が花開くのは後者なのかもしれません。
マチューが生徒に「しなかったこと」
マチューがしなかったことは、心を閉ざした子供の心を開くにあたってとても重要なものでした。
しかし彼は考慮して「しなかった」のではなく、おそらく無意識に「しなかった」のでしょう。
頭ごなしに怒ることはしない
子供たちに根っからの悪い子はいません。
自分の思い通りにならないからと怒るのは大人のエゴです。
マチューは子供がいけないことをしてしまっても頭ごなしに怒鳴りません。
子供の行動には理由があるもの、なぜそういうことをやってしまうのか、マチューは子供の心に真摯に寄り添うことが出来たのでしょう。
子供を疑わなかった
子供は疑われることで、自分の心を閉じてしまうものです。
マチューは決して彼らを疑ったりしませんでした。
他人を疑わないというのは、簡単そうでかなり難しいことです。
親が自分の子を信じ続けるように、マチューは生徒たちを信じ続けることが出来ました。
子供を疑わなかったのは彼の持つ「愛」以外の何物でもありません。
マチューに出会った子供たちは、きっと彼のように温かで寛容な心を持って人生を歩んでいくはずです。
モンダンを救うことはできなかった
劇中で無実のモンダンを、マチューは救うことが出来ませんでした。
このシーンは、なかなか衝撃的な場面です。
モンダンにとって大人は自分を殴る敵のまま、幕を閉じていくのです。
マチューは万能ではなく出来ないこともある、現実を見事に描いたことで人生の深みを感じさせています。
寄宿舎が火事になりました。
モンダンは高台でタバコを吸いながら、火事の光景を眺めていました。
引用:コーラス/配給会社:パテ
教育とは何かを考えさせる名シーンといえるでしょう。
モンダンのように最後まで救ってもらえない子もいる、そんな描写が非常に現実的です。
社会にはほころびも沢山存在し、全てがハッピーエンドにはならない……。
ハリウッド映画とは違ったフランス映画の味を感じます。
子供たちの心を考えさせられる作品
過剰な体罰の寄宿舎にマチューがもたらしたものは計り知れないものでした。
子供たちは何を求めているのか、大人たちは何をしてあげられるのか考えさせられる映画です。
派手なアクションはありませんが、マチューの自然体の姿が人の心の温かさをそっと伝えてくれるものではないでしょうか。