亮司は雪穂を守ることだけが生きる目的のように観えます。
彼女は誰も愛することがない、とわかっていたのではないでしょうか。
そんな彼女の一番近くにいるのが自分であり、彼女が自分を求めているのも感じていたはずです。
彼は雪穂が持つことのできない「愛」を雪穂に捧げています。
その為に罪を犯し続けたのは愛が極端に偏っていた為でしょう。
家庭環境が生んだ闇
亮司が犯罪者となったのは父親殺しがきっかけですが、もとをただせば家庭環境にあります。
心が満たされず、傷を抱えたままの心が怒りに変わり犯罪への原動力となっていくのです。
亮司も両親に十分な愛を受けておらず、雪穂の存在が自分の存在価値を確かなものにしてくれたのでしょう。
彼もまた雪穂に依存し生きていたといえるのではないでしょうか。
亮司にとっての白夜
「白夜」とはいわずとも知れた沈まぬ太陽であり、薄明かりの状態です。
本作のタイトルともなった「白夜」は、亮司にとってどんな意味があるのでしょう。
雪穂を守る想い
雪穂は自分を求めていると感じていた亮司にとって、自分は沈まぬ太陽であり続けようと思ったことでしょう。
雪穂が歩む上で、邪魔になるものを排除し彼女が転ぶことのないように道を照らす太陽です。
その行動の根底には「愛」と「依存」が見え隠れしています。
雪穂が自分にとっての白夜だった
劇中では雪穂が亮司を沈まぬ太陽だと例えていますが、亮司にとっては雪穂がそうだったのでしょう。
子供の頃、図書館で同じ絵本を借りていた時から彼は雪穂に強い絆を感じていたはずです。
彼の人生のよりどころともいえる雪穂の存在は、彼の行動の原動力であり唯一の光だったのです。
タイトルにつけられた「白夜」は薄暗い世界です。
二人にとって世界はどこか朧気で薄暗い場所だったのかもしれません。
ドラマ版を観て繋がる「白夜行」
『白夜行』は映画化される前に、ドラマでも放送されています。
ドラマ版では亮司の視点で物語が展開していくので、映画とは違った視点で楽しむことが出来るのではないでしょうか。
登場人物やストーリー性も多少違っていますが、双方を観ることで作品に深みが増していきます。
亮司の視点で本作を楽しみたい人は、ドラマ版もおすすめです。
人生の闇を描く名作
本作はサスペンスでありながら、人間の心の闇を巧みに描いた作品です。
主人公に感情移入するのが難しいともいわれていますが、彼らの育った環境を想像すると罪を犯す心境が観えてくるかも知れません。