出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B075LJSBRG/?tag=cinema-notes-22
マイク・ニコルズ監督は、アメリカン・ニューシネマの名作「卒業」の高評価、大ヒットで一躍名匠の仲間入りを果たしました。
ニューヨークの金融業界を舞台に、現状を打破し、夢に向かって敢然と立ち上がるキャリアウーマン。
彼女らの姿をコミカルな味付けの中に描く、ニコルズの代表作の一つともなったのが「ワーキング・ガール」です。
主人公と共に悩み、人生について考えさせられる点も多い作品といえます。
上昇志向が強いアラサー女性の、時にトリッキーともいえる「(会社)人生向上計画」は、男性関係も並走させながら進行。
ラストのカタルシスも見事な仕上がりです。
脚本を担当したケヴィン・ウエィドの筆力もさることながら、やはり作劇の天才・マイク・ニコルズの演出が光ります。
メラニー・グリフィス、シガニー・ウィーバー、ハリソン・フォードらの若き姿を堪能できるでしょう。
また80年代のアメリカの金融、産業界事情、当時の女性ファッションやヘアスタイル・メイクの流行、NYの風景などの風俗が活写されています。
それらを楽しむ側面を持っている作品でもあり、数多くの賞も受賞している作品なのです。
【受賞】
ゴールデングローブ賞 作品賞 (ミュージカル・コメディ部門)受賞
ゴールデングローブ賞 主演女優賞 (ミュージカル・コメディ部門)受賞
ゴールデングローブ賞 助演女優賞受賞
ゴールデングローブ賞 主題歌賞受賞
アカデミー賞主題歌賞受賞 – カーリー・サイモン「ステップ・バイ・ステップ(Let the River Run)」引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/ワーキング・ガール
それではこの映画を、主に二人の女性の生き方を中心にみていきましょう。
冒頭タイトルバックは自由の女神。すでに内容を暗示するような空撮から始まります。
テス(メラニー・グリフィス)の立ち位置
「ガラスの天井」を破るんだ!
本作が製作・公開された1988年頃のアメリカのビジネス界では、作品中にも描かれるように女性の進出が進んでいた時期。
しかし、その立場はいわゆるアシスタント的、お茶くみ的存在の域を出るものではありませんでした。
女性たちもそういうものだと諦めている感じです。
テスの決意
作品中でも、主人公テスや仲間たちは秘書的、データ入力仕事などの単純作業に限定されている様子が描かれています。
それをテスは打破したかったのです。
「ガラスの天井」を破りたい!という上昇志向は強いものの、秘書という立場では自分の夢は叶わないと悶々とする日々でした。
努力をしていればこそ、女性を性的ジョークを投げかける相手としかみないような男性上司に怒りにまかせたイタズラをしてしまったのです。
キャサリン(シガニー・ウィーバー)の立ち位置
テスの対極にいるヒール
テスが新しく秘書として仕えるボスは、M&A部門の部長として赴任してきたなんと同い年(30歳)のバリバリの女性幹部キャサリンでした。
ここでのシガニーは辣腕でスタイリッシュですが、悪役、憎まれ役に徹していて見事です。
テス対キャサリンの構図
秘書のテスに「アイデアはいつでも提案してね、私たちはチームだから」などと上手いことを言うキャサリン。
研究熱心で頭も切れるテスのアイデアを盗んで自分の手柄にしようと企むヒールとして描かれます。
M・グリフィスの舌足らずの喋り方が今ひとつ賢そうに感じないのが残念なところです。
ラストのカタルシスで重要な役割を果たすキャサリン(シガニー)は、「水戸黄門」の悪代官のようなポジションとでもいえば分かりやすいでしょうか。
ジャック・トレーナー(ハリソン・フォード)の接着剤的立ち位置
テスとキャサリンの物語を回転させる役割
着任早々、休暇のスキーで足を骨折し、自分の仕事や自宅の「保守点検」を秘書テスに任せざるを得なくなったキャサリン。
ニコルズ監督はキャサリンの仕事にテスが入り込むという重要な場面転換をスキー場場面の、たった2カットでやり抜けます。