宣教師が掲げる「理想郷」と、グアラニー族の植民地化を目論むポルトガルの権力者にとってのそれは明らかに目的が違いました。
前者は農作業の収益を平等に分配し、逃亡した先住民奴隷をも惹きつけました。布教区を作った当初こそ、誰もが主=神の御心に忠実であろうという希望に溢れていました。
しかし、実際のところ、それはポルトガルの施政者の私利私欲の欲望塗れの人間の傲慢が都合良く神のフリをしているだけでした。
奴隷制度の見解の違いがもたらした結果
スペインでは、当時ポルトガルから奴隷を買うことはできました。しかし、奴隷収集そのものは、非合法とされていました。
一方ポルトガルでは、奴隷は合法で、奴隷狩りも行われていました。
そのため、奴隷の逃亡は、著しく不利益となり、植民地当局にとってガブリエル達宣教師は「邪魔な」存在になってしまいました。
南米領土の分断がもたらしたもの
当時スペインとポルトガルの両国によって南米領土の線引きが行われました。
ガブリエルが所属するイエスズ会布教地区は、ポルトガル領に編入されました。
その影響で、宣教師達は、村からの退去、また、グアラニー族をはじめとする先住民は、布教村からの退去を命じられてしまいました。
ガブリエルとメンドーサが選択した道は?
「神の御心に従う」はずのガブリエルはグアラニーの民と共に、イエスズ会の指示に背きミサを守ろうとします。
メンドーサも宣教師の掟そのものに、あえて背き、植民地当局が制圧のために派遣した軍隊と戦う道を選び、銃弾の中を十字架を背負って歩み出していきます。
最後に残った希望
軍が介入し、グアラニー族は女子供まで凄惨なやり方で惨殺され、袂を分かったガブリエルも、メンドーサも凶弾に倒れ、殉教してしまいます。
唯一の救いとして、エンドロールでメンドーサを慕っていたグアラニー族の少年が生き残り、船に乗って川を進んで行きます。
「人は大人になると子供らしさを忘れる。この世に存在する信仰と希望と愛。三つの中で最も強大なものは愛である」
「光は闇の中で輝く、闇は勝てなかった。」出典:ヨハネによる福音書1章5節
セリフこそありませんが、グアラニー族の子供達が、ふとした場面で見せる表情や「視線」が無言のうちに多くを訴えている瞬間が様々な場面で感じられます。
広大な自然の中でのロケの意図とは
壮大なロケの現場は何処?
宣教師が、冒頭から十字架に磔のまま殉教し、滝から落とされ流されていくシーンがあります。
作品の舞台であるパラグアイの国名の由来になった、パラナ川とイグアスの滝のロケーションは全編を通して見所の一つです。
あえて広大な自然を舞台にしていることで、本編の人間の営みの醜さや変わらなさが浮き彫りにされています。
本作は難解で伝わりづらいテーマですが、
ロバート・デ・ニーロや、ジェレミー・アイアンズ、若きリーアム・リーソンらの熱演と圧倒的な映像と音楽の化学反応で、
見事に表現することに成功しています。
最近の視聴環境について
目下、視聴困難!
「ミッション」は、惜しいことに2019年現在、NHK-BSでの何度かの放送を除くと、最新のサブスクリプション環境では、何故かピックアップされていないのが現状です。様々な権利関連の問題もあるかもしれませんが、いつでも素晴らしい作品は手軽に観られるインフラが整備されてほしいものです。