愛していた者の裏切りを経験し、自分の弱い心を捨てたのです。
不遇な幼年期を過ごし愛に裏切られ、エリザベスは全てを拒絶するかのように攻撃的に、鉄壁の防御を張り巡らしていくのです。
2019.08.27
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愛していた者の裏切りを経験し、自分の弱い心を捨てたのです。
不遇な幼年期を過ごし愛に裏切られ、エリザベスは全てを拒絶するかのように攻撃的に、鉄壁の防御を張り巡らしていくのです。
マリア像の前の断髪は、弱気を捨て去る彼女のけじめなのでしょう。
幼い頃に父親に母親を殺され、庶子として育ったエリザベスですが彼女の心の中には王女としてのプライドが根付いていました。
だからこそ度重なる裏切りをも乗り越え、自分へ向けられた暗殺計画に真っ向から立ち向かうことが出来たのです。
彼女が王女としてのプライドを失っていたら、エリザベス1世の御代は訪れなかったでしょう。
また元々気位が強い女性だったともいえます。
エリザベスには二人のメアリーというライバルが存在します。
彼女たちの存在がエリザベスの刺激となり、彼女の強さへと形を変えていきました。
メアリー1世は母親を王妃から貶めたアン・ブーリンの子であり、女王としてのライバルとなるエリザベスを心から憎んでいました。
エリザベスはメアリー1世によって投獄され「自分の死」が目の前にちらつきます。
この時の恐怖をエリザベスは忘れることはなかったのではないでしょうか。
周囲の流れで、自分が危機に立たされるという経験をしたのです。
エリザベスの行動が慎重で他を寄せ付けないものとなっていくのは全て彼女の経験からくるものなのでしょう。
またメアリー1世はスペイン王フェリペ2世と結婚したことで、フランスとの戦に巻き込まれ窮地に立たされています。
エリザベスは義姉のように他国に支配されぬよう、他国から夫を取らず生涯独身を通しています。
劇中では語られませんが、エリザベスと同時期にスコットランドを治めていたメアリー・スチュアートがもう一人のメアリーです。
メアリー・スチュアートこそイングランド王にふさわしいとの声を受け、エリザベスはかなりの対抗心を燃やしていたことでしょう。
ことあるごとに彼女の上を行こうと努力していました。メアリー・スチュアートの存在がエリザベスを成長させたのは間違いありません。
劇中では恋人に裏切られ、女としての幸せを捨てたエリザベスですが歴史を覗いてみると、少々気になる逸話が残されています。
生涯をイングランドの為に費やし独身を貫いたエリザベスですが、一説では結婚出来なかったのではないかとも囁かれています。
その理由が男性だから。
エリザベスは背が高く、実際に使用していた手袋を見ると指が異常に長く顔も男性的といわれています。
また偉大な存在をアピールしていた異様な白塗り化粧やかつらは男性であることを隠す為ともいわれています。
さらに首の周囲につけている襟はのどぼとけを隠す為とみられています。
エリザベスの男性説は見た目だけではありません。
エリザベスは10歳の時に疫病を避ける為コッツウォルズ村で過ごしました。
しかしこの時エリザベスは疫病にかかり死亡したともいわれています。
しかし周囲の者は残虐な父王に娘の死がばれないように、顔立ちや背格好の似た男子を女装させてエリザベスとしました。
コッツウォルズ村には、男の子を女装させるお祭りが今でも残っているそうです。
またコッツウォルズ村では、エリザベスの時代の宝石がちりばめられたドレスを着ている骸骨を聖職者が見つけたという話もあるようです。
「エリザベス」は人の心に住む欲望や宗教的な争いを見事に描いています。
ごく普通の少女として生まれたエリザベスが女王としての絶対的な地位を得るまでの物語です。
エリザベスが苦悩する姿は、一人の人間として身近に感じる瞬間でもあります。
不遇の時代を経験したからこそ、揺るぎない女王となることが出来たのです。しかしエリザベスの物語はここで終わりません。