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フレンチ・ヌーベルヴァーグの旗手、フランソワ・トリュフォー。
彼が当時個人的に恋愛関係にあったといわれるカトリーヌ・ドヌーヴをイメージして作った作品が「終電車(Le dernier métro)」です。
製作当時30代後半に差し掛かったフランスを代表する大女優カトリーヌ・ドヌーヴ。
「芯が強く、恋に揺れる女心の艶に満ちた演技」が本作の最大の見所でしょう。
1980年のフランスの長編映画である。
セザール賞主要十部門(作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、主演男優賞、撮影賞、録音賞、編集賞、美術賞、音楽賞)受賞。
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/終電車_(映画)
さらにアカデミー外国語映画賞ノミネートされるなど高い評価を受けています。
この「終電車」は、円熟の境地にあった彼が放った、自身フランスでの最大のヒット作となりました。
フランス映画の真髄を感じさせる三人の恋愛模様と、衝撃の結末の意味を考えながら、「終電車」の魅力を探っていくことにしましょう。
タイトルが語る当時のパリ
「終電車」とは何のこと?
本作の原題は”Le dernier métro”(ル・デルニエール・メトロ)。「地下鉄最終列車」という意味です。
映画の時代背景は、ナチ占領時代のパリです。
当時のパリ市民は
パリは1940年6月から44年に連合国によって解放されるまでナチスドイツの占領下にあり、夜間外出禁止令が出されていました。
楽しみが減っていく中、パリでは演劇(もちろんナチが許可したもの)が市民の大きな息抜きの時間でした。
観劇の楽しみが終わると彼らは「終電車」を目指し、メトロの駅に急ぐのです。
絶妙な時代背景
クロード・ルルーシュの作品では時代設定や、舞台となる場所の設定が巧みなことも大きな特徴といえるでしょう。
本作では、第二次世界大戦の占領下のパリ、というパリジャン、パリジェンヌたちにとって窮屈極まりない生活を背景にしました。
これには恋愛の環境を制限あるものの中において、物語に関わる人々の心の動きを戦争と相互に関連づけさせながら描くという長所があります。
つまり映画の幅を広げる効果を持つのではないでしょうか。
本作で描かれるのはほとんどが室内で、戦闘シーンは無く、市民の中にドイツ将校がいることでドイツの存在を上手く表現。
その分、主要人物3人の心の動きが「濃密」に描かれているのです。
加えてナチ支配下の「閉塞」とパリ開放に伴う「開放」が三人の関係のメタファーとしても描かれ主役らの気分を補強しています。
この辺りの時代設定、舞台設定の上手さはトリュフォーの特徴、武器といっていいでしょう。
フランス映画の真髄をみる
先を予測させない三角関係
フランス映画の、中でもトリュフォーは男女の「三角関係」をテーマとするのを好みました。
「突然炎のごとく」や「恋のエチュード」はその代表格でしょう。
その特徴は、観客にラストを予測させない極めて複雑な終わり方、唐突感のある終わり方をさせる手法です。
そこにはフランス映画の特徴である恋愛感情の複雑さ、諦観、迷い、大胆さ、意味深長な決断が描かれるのです。