「心の動きの深いところを描ききる」という「フレンチのエスプリ」が効いているということでしょう。
フランス映画の真髄を思わせる恋愛の描き方といえます。
本作の「三角関係」
マリオン、夫ルカ、そしてその間に入るベルナール。衆目の一致するところは、マリオンの一人舞台という感じで三人の関係は進みます。
ベルナールはナンパ男なのにマリオンにはストレートに愛を打ち明けられない。
劇場を切り盛りする看板女優という立場に気後れしたのでしょうか。
(彼は映画の中で女性に対し「君の中には二人の女性が見える」といいますが、それが彼の結末の伏線になっています。)
あるいはマリオンの女性としての強さに腰が引けたのでしょうか。
一方、マリオンの夫ルカはナチの手を逃れ劇場の地下に潜み、まるで歌姫クリスティーヌを偏愛の中、見守る「オペラ座の怪人」の様です。
彼らの愛の三角関係は常にマリオンに主導されて進みます。想いを寄せるものの今一つ彼女に近づけないベルナール。
地下にいて、妻の姿を見つつ、ベルナールが妻を愛していることに気がつく夫ルカ。
強いマリオンに「愛していればこそ」なのか、身を引く決心を見せる夫や、恋愛における主導権を握られっぱなしのベルナール。
その三人の複雑な関係は、強い女マリオンの勢いを保ったまま、ラストでは意外な展開を見せます。
ここの仕上げ方はまことにトリュフォーらしい構成・演出といえるでしょう。
それは以下のように描かれていきます。
劇中劇を使った最大の見所
ベルナールを迎えた新作「消えた女」は大成功。その後ゲシュタポの捜査を受けるものの地下の夫は難を逃れました。
その後、ベルナールとルカが初めて対面。その時夫ルカから出た言葉は、ベルナールを驚かせるのに十分でした。
妻は君にほれている。君は彼女を愛せる?
引用:終電車/配給会社:東宝東和
地下にいても、妻が別の男を愛しているとルカは鋭い演出家の視点で理解したのでしょうか。
ベルナールは初めてマリオンの気持ちに気づき、その後二人は結ばれます。
しかし、ベルナールはレジスタンスに身を投じるためマリオンの元を去ってしまうのです。
マリオンの愛の重さを受け止めきれなかったのでしょうか?
一方、ベルナールがいなくなってもマリオンらは代役を立て、地下にいる夫ルカの演出を受けパリ解放まで劇場を続けました。
そしてパリ解放。813日の辛抱を経てルカは久しぶりの太陽降り注ぐパリの街を眩しそうに眺めます。
圧巻のエンディング
トリュフォー流「恋愛精算法」
シーンは変わり、マリオンが戦争から帰ってきたベルナールを病院に見舞う場面。
マリオンとベルナール二人の「愛を確認するやりとり」が続きます。