ジョン・ドゥに対する怒り、嫉妬に燃え上がったミルズの心を愛しい妻の顔とともにむなしさや悲しみ、そして復讐心がよぎります。

最初は激情にまかせて引き金を引こうとしました。ですが妻の妊娠を告げられて彼の心は蒼白になり、一瞬の冷静さを取り戻します

ミルズはその行為がジョン・ドゥのもくろみ通りになることを知りながら、それでも七つの大罪のうちの嫉妬と怒りを引き受けて、引き金を引くのです。

ジョン・ドゥがなりたかったもの

ジョン・ドゥのその高潔な精神からいって、自分がおぞましい七つの大罪の一部になるのは耐えられないのではないでしょうか。

おそらくはジョン・ドゥ自身の死は尊き犠牲者、他の者の罪を引き受けて十字架にかかったイエス・キリストのような存在になりたかったのでしょう。

そして嫉妬、怒りを体現する罪人はミルズでしょう。ではミルズの妻トレーシーの死は?という疑問が残ります。

トレーシーは生前「この街が嫌いだ」とサマセットに打ち明け、子供を産むことにも不安を抱えていました。

トレーシーは七つの大罪のもとになった八つの人間一般の概念の一つである悲嘆(憂鬱)の犠牲者ということになるのだと考えることができるのではないでしょうか。

ジョン・ドゥが用意した2つの結末

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そしてジョン・ドゥは2つの結末を用意していました。

一つはミルズがジョン・ドゥを殺した後自殺するか、もしくはサマセットによって射殺されるか。これで七つの大罪は完成します。

もう一つはこの映画のラスト通り、ミルズはジョン・ドゥを殺しながらも自身は死なず、生きて殺人の罪を贖うことになること

これも一つの意味で七つの大罪の完成といえるのかもしれませんが、このミルズが生きることによってジョン・ドゥは七つの大罪の完成よりもさらに壮大な物語を完結させることになります。

ダンテの神曲においては、七つの大罪を贖い清めたものは天国へ到達します。

ミルズが生きながらえることによって七つの大罪は完成せず、ジョン・ドゥにとっての七つの大罪の贖いであった七つの死は満たされません。

ミルズはジョン・ドゥに対する憎しみと妻を死なせた悲しみ、そして罪の意識を背負いながら今後生きていくことになります。

その世界にはもはや明るい未来は存在せず、生きながら地獄をさまようようなものでしょう。

ダンテの神曲の地獄篇の体現者のように救われることなく地獄を彷徨い続け、ミルトンの失楽園のアダムのように楽園を追われていくことになります

ジョン・ドゥによって壮大な物語が現世で実現することになるのです。

サマセットの絶望

ブロマイド写真★映画『セブン』ブラッド・ピット&モーガン・フリーマン/カラー/腕組み
厭世観をあらわにした定年間近の老刑事サマセットは思慮深く、文学や歴史、宗教学にも通じた人物です。

若く未熟で感情をあらわにするミルズとは対照的な存在ですが、彼が内包する絶望もまたこの映画に暗い影を落としています

この街に、そしてこの世にはびこる無関心さ、醜さを恐れるあまり自分の子供を誕生させなかった過去を持つサマセット。

刑事として訪れた現場で子供が凄惨なシーンを目にしなかったかどうか気にする姿からは繊細で優しい心の持ち主であることが窺えます。

そして心優しく善人であるがゆえにこの世の中では生きづらく、世の中に絶望しているのです

ラストシーンでサマセットははミルズがジョン・ドゥを殺そうとするのを必死で止めようとしますが、むなしくもミルズはジョン・ドゥを殺してしまいます。

その結果を目の当たりにしたサマセットは、肩を落として深い溜息をつくのです。

通常であればミルズに詰め寄ったり、また逆に崩れ落ちたりともう少し大きな感情の動きがあるものではないでしょうか。

どこかでサマセットはこの結末を予想していたのかもしれません。

純粋で心優しくきれいな心を持つサマセットは、車の中でのジョン・ドゥとのやり取りでどこか共通するものを感じていたかのような表情を見せることがありました

ジョン・ドゥもまた、この世界の醜さに絶望していた一人だったからです。

サマセットが、そして「セブン」が体現するものとは

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その生き方には天と地との差がありますが、サマセットとジョン・ドゥはどこかで似通っていた魂を持っていたのでしょう。

この対比も悪魔がもとは高潔な天使であったことを思い起こさせます

善と悪とは表裏一体、天使が堕天使になり、悪魔になるのと同じなのです。

醜い世の中に絶望しきっていたサマセットは、それ以上絶望することはできようもなく、常に抱えている深い絶望の中でまた溜息をつくのです。

深すぎる絶望のためにサマセットが嫌う「無関心」を、自衛のために心の中に住みつかせながら。

この映画のラストには、全ての人間の光と闇、そして絶望が混在していました。

意表を突いたラストだということもありますが、その精神性が無意識のうちに多くの人々の心の中の何かを揺さぶるからこそ、何年経っても名作といわれ続けるのでしょう。

あなたが心揺さぶられるのは、この作品の絶望でしょうか。それとも常軌を逸するまでに高潔な魂でしょうか。

どちらにも抗いがたい、それが神でも悪魔でもなく人間というものの本質なのではないでしょうか。

それを改めて思い出させてくれるのがこの「セブン」という映画なのだと思います。

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