当然、基本がなっていないピアノ演奏も鼻歌も拒絶しました。
こんなセシルと結婚すれば、ルーシーはセシルの価値観に合わせた生活を強いられることは容易に想像できます。
またルーシーに初めてのキスをするときは、わざわざ了承を得る丁寧さ。
英国紳士として当たり前の態度ではありますが、まだ若い盛りのルーシーにとっては物足りませんね。
ルーシーにとってジョージとは
セシルと髪色は違えど、ジョージもフィレンツェではスーツ姿でしたね。
しかしイギリスに帰国してからの彼は比較的ラフな服装をしていました。
ルーシーにとって彼はどんな存在なのでしょうか。
ジョージは刺激を連れてくる
自転車に乗ったりテニスをしたり、というのは貴族階級のセシルも経験があるかもしれません。
しかし全裸で水遊びはどうでしょうか。
インパクト大だったあのシーンのジョージを、セシルに置き換えて想像するのは非常に難しいですね。
イギリスの階級は経済面よりも家系が重視される傾向にあり、上流階級の人々は「上流階級らしさ」が求められます。
そうなると交友関係も同階級の人ばかりになり、あまりにアクティブ過ぎる趣味や遊びは淘汰されていくのでしょう。
セシルから求婚されるという事実から、ルーシーもそれなりの階級であることは明らかです。
そんな彼女にとってジョージは、刺激の塊のような存在だったのではないでしょうか。
階級社会の悲しき現実
うら若き乙女が刺激を求めるのは当然のこと。これは遺伝子に組み込まれた本能のようなものです。
しかしルーシーはジョージの想いを退けました。これはなぜなのでしょうか。
やはり階級の差は大きく影響したはずです。
彼女の周囲の人々がそうであるように、自分も上流階級の人と結婚するのが当たり前。
それ以外の選択肢はないと思っていました。
だからこそ中流階級、あるいは労働者階級のジョージからの求愛に決してなびかずにいたのです。
そして家族がセシルの感覚に疑問を抱くようになっても、婚約破棄せず「婚約者がいる」と素直に話したのです。
二人の男性がルーシーにもたらしたもの
二人の男性の狭間で揺れる日々の中で、ルーシーはジョージとセシルから大切な「何か」を受け取りました。
二人の男性は彼女に何をもたらしたのでしょうか。
イギリス人淑女としての自信
当時のイギリス人女性が何不自由なく暮らしていくための最善の方法。それは上流階級の男性と結婚することでした。
しかし望めば相手が見つかるというわけではありません。作中にはこんなセリフがありました。
来年は信託財産が入るわ。
引用:眺めのいい部屋/配給会社:シネマテン
良い家柄だということが読み取れます。だからといって上流階級の男性に選ばれるわけではないのです。
「選ばれる女性」になれるように立ち居振る舞いや教養を身につける必要もあります。
その上でセシルはルーシーを選びました。
基本や規律を重んじる貴族階級のセシルのお眼鏡にかなう女性は、紳士の隣に並ぶことが許される淑女なのです。
これはルーシーの大きな自信になったことでしょう。またこの自信は、後の彼女の決断を後押ししたとも考えられます。
新しい世界を見せてくれたジョージ
良家育ちのルーシーにとって、ジョージは新しい世界を見せてくれる存在です。
「見せる」とは視覚的なものだけでなく、感覚的なものも含めます。
ジョージと出会わなければ、情熱的なキスがどんなものなのか知ることはなかったでしょう。