クリスアンは必要以上に養育費を使い込んでいました。しかも、その事実をクリスアン自身はなかなか認めようとしませんでした。
直接的にはこれが最大の理由でした。クリスアンは勿論、スティーブとリサは長い間、不仲になり、会うことすらなくなってしまいます。
98年iMacの発表会の時点でハーバード大学の学生だったリサに、大学の学費は負担しないとスティーブは断言していました。
スティーブが打ち明けた真実とは?
98年発表会直前の出来事
スティーブの部下のジョアンナ(ケイト・ウィンシュレット)は、リサが靴下も買えないほどに困窮していることを聞いていました。
見かねたアップル時代のスティーブの僚友アンディが学費の支払いを援助し、リサを精神分析医に通わせていることも知っていました。
何とかして事態を収拾しようと、ジョアンナは「2人が仲直りしなければ、アップルを退社する」とまで言い放ちました。
ようやくジョブズは、初めてリサに隠された真実を打ち明けることを決意します。
リサは、スティーブがクリスアンを酷く中傷した記事を読んでしまい、父親への不信感に苛まれ酷く悩んでいました。
発表会でも、スティーブが頑なに拒むリサを説き伏せて、やっと2人で久しぶりに話す機会を得ました。
14年越しの父娘の邂逅
そこで、スティーブは和解をアピールすべく、リサに以下の3つの事実を遂に告白しました。
- クリスアンが養育費を使い込んだことを問題視していること
- 84年に発表したマッキントッシュのリサは、娘の名前が由来だったこと
- 14年間、直接伝えられなかった理由は、スティーブ自身が出来損ないで、自信が持てなかったこと
更に「リサが校内新聞で連載するエッセイを読ませなければ、新製品発表会に出席しない。」とまで言ったのです。
彼女のカセットプレイヤーを指差し「500曲から1000曲をポケットに入るようにするよ。」と後のiPod を制作することを約束しました。
ようやくリサもスティーブの和解の気持ちを受け入れたのです。
リサの回顧録「スモール・フライ」
スティーブの2011年の死後、リサは自ら誰にも頼らず出版社も何もかも自分自身で決め、回顧録「スモール・フライ」を出版しました。
この回顧録で初めて父娘の関係、ジョブズ家の秘話が彼女自身の言葉で明かされます。
- リサが看病に自宅を訪れた時、スティーブは自分の足に触れるよう命じ、「お前、トイレみたいに臭う。」と放言。
- スティーブはリサが産まれる時、しっかり立ち会った。
- マッキントッシュを幼いリサに初めて触れさせ、リサが線を書いた画像を保存し、彼女を娘だと認知した。
ジョブズも絶対に明かすことがなかった、本邦初公開の知られざるエピソードが満載されています。
二本の映画と併せ、人間スティーブ・ジョブズを知るのには、格好のサブテキストといえます。
まとめ
スティーブ・ジョブスは、ビジネスマンとしてのデビューが革命的だった反動で私生活はスキャンダラスな面が突出して報道されがちでした。
しかし本作は妻や娘との関係、一番身近な部下とのやりとりを通して、人間スティーブ・ジョブスの真の姿が浮き彫りになります。
特に、娘のリサとの親と子供にしか知り得なかった関係性が見事に描かれていました。アップルの創始者としてのジョブスのファンも、人間ジョブスに関心がある人も、必見の一作と言えるでしょう。