万次が凜の依頼を受けたときも、善悪とは関係なく、凜が両親を殺された無念を正直に吐露したときでした。
300人を相手に誰を斬るか凜に聞いた時も、凜の「私を斬ろうとする人」という正直な答えに万次は納得しました。
万次にとって重要なのは、立場によって変わる善悪ではなく、大切な人の思いなのです。
斬る相手を問われた凛の心境の変化
万次は凜に2回斬る相手を問いました。
斬る相手をきいたときは、万次が凜の正直な思いをきいたたときでした。
一方の凜は、その2回の問いかけの間でどう心境が変化したのでしょうか。
答えは、万次への信頼です。
一度目の問いかけのときに、凜は天津がいかに悪なのか。
いかに斬られなければいけない存在かを強調することしかできませんでした。
それは万次を知らないがゆえに、一般的な善悪で訴えかけようとしたのです。
しかし、二度目の問いかけのとき、凜は自分を助けてほしいと素直に伝えます。
そして万次も凜の答えに満足して、戦いに挑みました。
1回目と2回目の問いで、凜がいかに万次を信頼するようになったのかがよくわかります。
万次の不死の意味とは
なぜ万次は不死にされたのか
なぜ万次は不死となったのか。
なぜ八百比丘尼は万次を不死にしたのか。
劇中では、八百比丘尼の意図は明かされていません。
同様に、不死の身体をもつ閑馬永空も、なぜ不死にされたのかはわかりません。
けれども万次が力尽きる前に不死にしたことから、万次を助けようとした意図がみられます(万次自身は死を望みましたが)。
そして凜に万次を紹介したのも、妹を死なせた罪に苦しんでいる万次のためだと考えられます。
八百比丘尼には、何か万次を救おうとする意図があるのかもしれません。
万次は本当は死にたかったのか
作中、万次に一番の危機が訪れたのは閑馬永空と戦ったときです。
対血仙蟲の武器に対して、万次は対抗手段を持っていませんでした。
そして、万次は遂に死ぬことができる、と期待します。
不死身の身体となり、死ぬことのできない万次には生きる辛さしかありませんでした。
妹という大切な存在を失った万次は、俗世とは関係を持たないために、一人山奥で暮らしていたのです。
そんな万次にとって死は願ってもないことでした。
しかし、なぜ閑馬永空を倒して死ぬことを諦めたのか。
それは凜を思い出したからです。
かつての妹のように守るべきものの存在を思い出したこと、もう失いたくないという思いが、死への憧れを上回ったのです。
万次はなぜ凜を守るのか
万次がなぜ凜を守ろうとしたのか。
それは守ることができなかった妹の存在を凜に重ね合わせているからです。
自らの正義感によって、妹の夫を殺し、妹の気を狂わせたこと。
妹の幸せを奪ったこと、そして妹を死なせたことは万次にとって、一生背負う罪だったのです。