誰もが通過したことのある経験ではないでしょうか。吹き溜まりのような停滞した時間……。
そして告白などを通して真琴の周辺が動き始めます。そんな変化にあがなうように、世界を元に戻したいと真琴はタイムリープするのです。
悲痛な叫び
世界を変えたくない、嫌なことから逃げたい、そんな自分の欲だけの為にタイムリープを繰り返していた真琴は、自分のタイムリープのせいで世界にひずみが起きていることを感じます。
このひずみの演出が絶妙に描かれていて「どうしよう……」と観客を考えさせるシーンとなっています。
終盤真琴は、タイムリープが使えなくなったことで大切なものを失い泣きじゃくってしまいますが、このシーンには時を無駄にしてはいけないという痛切なメッセージが隠されています。
自ら未来を切り開こうとする主人公
本作品の主人公はこれまでの主人公と違い、活発さが際立ち自ら行動を起こしていきます。
現代に沿った真琴像は、主人公をよりリアルにそして身近に感じさせてくれます。
プリンを食べる為にタイムリープした姿は、大人になり切れていない子供と大人の中間地点を見事に演出しています。
思いのまま行動を起こしていく主人公なだけに、真っすぐに走り壁に衝突する。そんな素直な生き方も観ていて心地よいものです。
待ち合わせに遅れてくる人がいたら、走って迎えに行くのがあなた
芳山和子が真琴に対していうセリフですが「走って迎えに行くのがあなた」という真琴像は、今を生きる女性たちの姿を反映しています。
芳山和子は自身の体験も話しており、過去の主人公の姿と現代の主人公の在り様を比較出来る場面となっています。
前作を観ていたらより楽しめるシーンでもあります。
アニメだからこそすべてのシーンに意味がある
これまで実写版として映像化されてきた「時をかける少女」ですが、アニメ版には実写版にはない良さが詰まっています。
存在しているものが映ったのではない
アニメ版は、制作サイドが意図して書いたものです。
実写のように存在するものが映っているのではありません。だからこそスクリーンで目に映るものは全て意味のあるものなのです。
特に「時をかける少女」は美しい背景描写でも有名です。私達の身近な世界が生き生きと美しく描かれています。
特に青空や雲の描写は素晴らしく、観るものを引き込んでしまいます。
シュレディンガーの猫は未解決を意味する?
よく観ていくと劇中の時間が止っているシーンで、箱の中に猫やガイガーカウンター(放射能測定器)などが入っている絵が見えます。
実はこの構図はシュレーディンガーの猫を示しています。タイムリープが量子力学的に実在するのか否かを考える思考的実験の構図です。
思考的な実験なので答えは勿論不明で、いまだに未解決な状態です。ほんの一瞬ですがこんな化学的な要素も盛り込まれているのです。