のび太たちと出会ったからこそ、限られた命を生きたいと望む心が芽生えたルカたちエスパル。
異説=想像力の持つ力を示しているといえます。
もう一人の主役!?異説クラブメンバーズバッジ
ドラえもんといえばひみつ道具です。
登場するとトラブル解決の糸口になったり、反対に災難の元になったりするひみつ道具たち。
本作でも沢山登場しますが、最重要ひみつ道具といえば…異説クラブメンバーズバッジ!
月のうさぎという異説を信じるのび太を、クラスのみんなが馬鹿にしたことがきっかけで登場するひみつ道具です。
この異説クラブメンバーズバッジの登場について、辻村さんは以下のように語っています。
どうやってのび太たちを月面に行かせるか、その理由付けにすごく悩んだんです。
そこで「異説クラブメンバーズバッジ」を提案してくれたのは八鍬新之介監督で、この道具名を聞いた瞬間、「書ける!」と直感しました。
引用:https://www.shosetsu-maru.com/doraemon/tsujimura
本作の舞台となる異説の世界=月の裏に文明がある世界を見せてくれる重要な役割を担います。
それだけでなく、のび太似のムービット=ノビットがあべこべに作る定説バッジの元ともなりました。
そのことから、ひみつ道具が生み出す想像力の象徴でもあるといえます。
異説クラブメンバーズバッジは最初に月へ行く時に登場してから、ルカたちと別れ月から地球へ帰るまでみんなの胸元に付けられていました。
まさに本作の主役といえるひみつ道具です。
リアリティを追求する理由
本作を観ると、実際にある定説・異説が登場したり、地球から月までの距離は38万kmといった具体的なデータが使われていたりします。
一見、ストーリーを理解する上でわかりづらさの原因になってしまいそうなこれらの事柄を敢えて描くのは何故なのでしょうか?
映画を観た人たちが想像をするためのリアリティ
辻村さんは、大好きな藤子作品について以下のように語っています。
「現実に寄り添った上での不思議を描いているので、どんなウソでも許されるわけではありません」
引用:https://www.shosetsu-maru.com/doraemon/tsujimura
月にウサギがいるという想像力を裏付けるものとして登場した月の裏文明説。
事実ではないかもしれないけれど、文明があると信じることは間違いではないというメッセージが込められていました。
ルカたちが住む月の地下では、月の氷と液体窒素で空気を作るという説明がされます。
また、ウサギ王国を作るシーンでは植物を作る=生命が育つ場所を作る過程がきちんと描かれていました。
植物を作るには空気・日光・水が必要という具体的な説明も登場し、自然科学に基づいた描写です。
具体的にリアリティを示し、そのリアリティが想像の世界にあるということでリアリティと想像が共存する世界観が生まれます。
想像の世界を肯定するために、リアリティを追求することは不可欠なのです。
日常と想像の世界を繋ぐストーリー
本作は、のび太たちの日常のストーリーと月でのストーリーが繋がりを持つ作りになっています。