出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07C5VDMMB/?tag=cinema-notes-22

本作は昭和11年に起こった阿部定事件という実話をベースにして作られた日本・フランスの合作です。

大島渚監督作品の中でもかなり過激なハードコア・ポルノで、性器が無修正で映されています。

主演は吉蔵役に藤竜也、阿部定役に松田暎子を据え、二人の駆け落ちから衝撃の結末へ発展するのです。

料亭「吉田屋」で出会った主人と芸者の限りない愛欲と駆け落ちは二人をどう変えていくのでしょうか?

本稿では定が吉蔵を独占した理由を中心にネタバレ込みで考察していきましょう。

また、死んだ吉蔵の隣で幸せそうに微笑んだ理由と捕まった定の心境についても掘り下げていきます。

猟奇事件なのか?

日本猟奇・残酷事件簿 (扶桑社文庫)

本作がただのポルノ映画で終わらない理由に阿部定事件が内包している猟奇性が挙げられます。

まず男性器を切り落としたという出来事自体が普通では考えられない出来事だからでしょう。

しかし、この事件を本当にただの猟奇事件として片付けてしまっていいのでしょうか?

阿部定が吉蔵の性器を切り落とす所まで行ったのはあくまでも彼個人への愛が行き過ぎたからです。

彼女自身が元々そのような猟奇性を内面に帯びていたというわけではなく成り行きでした。

阿部定事件の本質は男女の愛に端を発するものであり、作品に寄せる形で迫ってみましょう。

定が吉蔵を独占した理由

本作で特に目立ってクローズアップされているのは吉蔵への独占欲が強い定の人間性です。

その独占欲はエスカレートしていき、後半では鋏を持ちだして吉蔵を脅すシーンすら見受けられます。

そこまでして定が徹底的に吉蔵を独占した理由は何なのでしょうか?

女郎上がりという蔑称

江戸モアゼル (バーズコミックス スピカコレクション)

最初のきっかけは吉田屋で働いていた定が女中仲間から「女郎上がり」と侮辱されたことでした。

明治維新以降江戸時代のアンダーグラウンドであった遊女は批判の対象へと変わったのです。

それが恐らく定の中で大きなコンプレックスとしてあったのではないでしょうか。

今でいえばいわゆる夜のお仕事や水商売で働く女性への差別と偏見に該当します。

そのような職業差別が時代背景にあったと考えられます。

性依存の可能性

性依存症のリアル

直接的な表現こそないものの、阿部定は性依存の可能性があるとも考えられます。

最初の内こそ吉蔵の人間性に惹かれたのの、程なくして彼の性器へ関心を寄せていました。

肉体関係を持つとき以外でも性器に触れたり咥えたりするなどは異常です。

また、定は吉蔵がトクを抱いていたのを見てカミソリで殺害する幻想すらしています。

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