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2000年頃から始まったJホラー・ブームは20年を経た今も衰えることはありません。2019年には映画『貞子』がヒットしました。
そのリング・シリーズの貞子と共にJホラーを支えてきたのが呪怨シリーズの伽椰子(かやこ)です。
2016年には『貞子VS伽椰子』というスピンオフ映画まで作られました。
また両シリーズ共にハリウッドでリメイクされたことから、Jホラーは世界中に旋風を巻き起こすことにもなりました。
今回はその原点の1つ『呪怨 劇場版』を解説します。この映画の最大の謎はなぜラストに理佳が伽椰子になったのかということでしょう。
同化願望という切り口からそれを掘り下げます。またシリーズの伏線についても指摘しますので、どうかおつきあいください。
さまざまな楽しみ方ができる呪怨シリーズ
呪怨シリーズは2000年から2016年まで日米合わせて合計12作もの映画が作られています。
となると『スターウォーズ』のように時系列に従って1つの線になるシリーズだと思いがちですが、実際それらはバラバラです。
ほとんどの作品が1作で完結するものであり、つながりは希薄です。一般の鑑賞者の多くは1作ごとに切り離して楽しんでいることでしょう。
ただ4作目までのつながりは比較的強いです。ビデオ版の1・2、劇場版の1・2は「呪怨4部作」ともいえるでしょう。
またシリーズの最終盤・2014年公開『呪怨 終わりの始まり』と翌年公開の『呪怨 ファイナル』も固くつながっています。
呪怨は1作ごとに楽しめながら、シリーズ・トータルとしても楽しめる作品だといえます。中間の作品にも伏線やリンクがあるのです。
初心者とマニア両方が楽しめる所に呪怨シリーズの最大の強みがあるのかもしれません。
『呪怨 劇場版』の魅力
おそらく多くの人にとって初めて伽椰子を観たのがこの映画だったのではないでしょうか。その底知れぬ魅力に迫ります。
伽椰子:その呪い無限大
伽椰子の最もユニークな点は呪いを無差別にかける所です。
彼女の怨念がある家に入っただけの人、またその人に関わった人にまで取りつくのです。
女優の奥菜恵も、自身が演じた理佳が何も悪いことをしていないのに呪われるという巻き込まれ型の話が面白いと指摘しています。
Jホラー以前のホラー映画の大半は何らかの閉塞状況をベースにしていました。
ゾンビものに多い山小屋やその近辺だけで起こる殺戮劇。ある呪われた一族で代々受け継がれる怪奇現象などなど。
しかし伽椰子の呪いには制限がなく無限大ともいえます。シリーズのハリウッド版で『呪怨 パンデミック』(邦題)というものが作られます。
伽椰子はまさにパンデミック・伝染病そのものです。
その呪いが世界中を覆い尽くす可能性もあるのです。この伽椰子の呪いのダイナミックさが呪怨の世界的な人気につながったのでしょう。
日常的な一瞬の恐怖
『呪怨 劇場版』において、清水監督は何よりも目に見える恐怖にこだわっています。
伽椰子や少年お化けの俊雄などあまりにも見えるので、コメディになるリスクもありました。
しかし世界中でホラー映画として絶賛され、清水監督の見える戦略は見事に当たったといえます。
一瞬だけ見える怪奇現象はこの映画で最も恐ろしい恐怖演出の1つでしょう。