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【呪怨(ネタバレ)】理佳が伽椰子の姿になったのはなぜか徹底考察!極度の恐怖が引き起こす同化願望とは?次作への伏線はどこに

出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B0041KXHZA/cinema-notes-22

2000年頃から始まったJホラー・ブームは20年を経た今も衰えることはありません。2019年には映画『貞子』がヒットしました。

そのリング・シリーズの貞子と共にJホラーを支えてきたのが呪怨シリーズの伽椰子(かやこ)です。

2016年には『貞子VS伽椰子』というスピンオフ映画まで作られました。

また両シリーズ共にハリウッドでリメイクされたことから、Jホラーは世界中に旋風を巻き起こすことにもなりました。

今回はその原点の1つ『呪怨 劇場版』を解説します。この映画の最大の謎はなぜラストに理佳が伽椰子になったのかということでしょう。

同化願望という切り口からそれを掘り下げます。またシリーズの伏線についても指摘しますので、どうかおつきあいください。

さまざまな楽しみ方ができる呪怨シリーズ

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呪怨シリーズは2000年から2016年まで日米合わせて合計12作もの映画が作られています。

となると『スターウォーズ』のように時系列に従って1つの線になるシリーズだと思いがちですが、実際それらはバラバラです。

ほとんどの作品が1作で完結するものであり、つながりは希薄です。一般の鑑賞者の多くは1作ごとに切り離して楽しんでいることでしょう。

ただ4作目までのつながりは比較的強いです。ビデオ版の1・2、劇場版の1・2は「呪怨4部作」ともいえるでしょう。

またシリーズの最終盤・2014年公開『呪怨 終わりの始まり』と翌年公開の『呪怨 ファイナル』も固くつながっています。

呪怨は1作ごとに楽しめながら、シリーズ・トータルとしても楽しめる作品だといえます。中間の作品にも伏線やリンクがあるのです。

初心者とマニア両方が楽しめる所に呪怨シリーズの最大の強みがあるのかもしれません。

『呪怨 劇場版』の魅力

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おそらく多くの人にとって初めて伽椰子を観たのがこの映画だったのではないでしょうか。その底知れぬ魅力に迫ります。

伽椰子:その呪い無限大

伽椰子の最もユニークな点は呪いを無差別にかける所です。

彼女の怨念がある家に入っただけの人、またその人に関わった人にまで取りつくのです。

女優の奥菜恵も、自身が演じた理佳が何も悪いことをしていないのに呪われるという巻き込まれ型の話が面白いと指摘しています。

Jホラー以前のホラー映画の大半は何らかの閉塞状況をベースにしていました。

ゾンビものに多い山小屋やその近辺だけで起こる殺戮劇。ある呪われた一族で代々受け継がれる怪奇現象などなど。

しかし伽椰子の呪いには制限がなく無限大ともいえます。シリーズのハリウッド版で『呪怨 パンデミック』(邦題)というものが作られます。

伽椰子はまさにパンデミック・伝染病そのものです。

その呪いが世界中を覆い尽くす可能性もあるのです。この伽椰子の呪いのダイナミックさが呪怨の世界的な人気につながったのでしょう。

日常的な一瞬の恐怖

『呪怨 劇場版』において、清水監督は何よりも目に見える恐怖にこだわっています。

伽椰子や少年お化けの俊雄などあまりにも見えるので、コメディになるリスクもありました。

しかし世界中でホラー映画として絶賛され、清水監督の見える戦略は見事に当たったといえます。

一瞬だけ見える怪奇現象はこの映画で最も恐ろしい恐怖演出の1つでしょう。

エレベーターに乗っている間、時折ガラス窓の向こうに俊雄君の姿がチラチラ見える。通り過ぎた鏡の中にチラっと伽椰子が映る。

清水監督は日常的な恐怖へのこだわりがあります。こういう一瞬の見間違えのような恐怖体験なら多くの人にも身に覚えがあるはずです。

派手に見せる恐怖よりも共感に訴えるさりげない恐怖の方に震え上がった人は多いのではないでしょうか。

時空がゆがむ呪われた世界

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映画の中にはさまざまな恐怖アイデアがありますが、最も特異なものは時空がゆがむ怪奇現象でしょう。

映画をループさせる父娘の共同幻視

元刑事の遠山は伽椰子の家を放火しようとした際に、室内で幻影を見ます。そこには女子高生たちがいて彼の娘・いづみもふくまれていました。

しかし当時いづみは小学生でした。その後、遠山は自殺し、娘のいづみは高校生になりました。

そして修学旅行中にお化け屋敷に入るような軽いのりで同級生たちとその家に入ります。いづみはそこで父である遠山の姿を見ます。

つまり、伽椰子の呪いから父娘2人は時間を越えて過去と未来のお互いの姿を幻視したということです。

呪われた者は過去も現在もない時空のゆがみに放り込まれるとも読めるこのアイデアは斬新かつ残酷です。

また映画のラストは理佳が伽椰子に呪われるシーンですが、時系列で見るとこのいづみの幻視が最後になります。

そのためこの父娘のループ幻視は映画全体を丸くグルリと収める効果も持っているといえるでしょう。

理佳はなぜ伽椰子になったのか

Ju-on: The Grudge (Devil's Advocates)
映画のクライマックスで福祉士の理佳が伽椰子に同化しました。一体それが何を意味するのかを読み解きましょう。

記憶まで奪った伽椰子の憑依

理佳は福祉施設のボランティアだった頃、佐伯家に送られて呪いにかかります。その後、彼女は無事に救い出され数年後に福祉士になります。

しかし伽椰子の巧みな罠で再びその家に行ったことで呪い殺されてしまいました。

そして理佳は死ぬ前に伽椰子が自分に同化していることに気づきます。

伽椰子がそれまで数多くの人にしてきた凶行の記憶が、理佳の中でフラッシュバックのように甦ります。

そしてその顔はすべて理佳の顔になっていました。

普通に見れば、伽椰子が理佳の頭の中にまで憑依したと思われます。しかしもう1つ別の見方もできるのです。

人の持つ恐怖対象への同化願望

The Grudge (Ju-on) [Import anglais]

伽椰子が理佳に同化したのは理佳がそれを望んだからだとも見れます。

深読みになりますが、恐怖対象への同化願望は矛盾しながらも自然な反応だともいえるものです。

例えば、お化けがすごく苦手なのに呪怨のようなホラー映画を観たりお化け屋敷に行きたがる人は数多くいます。

それはお化けに自ら近づくことでその恐怖を克服しようとする心理の表れでしょう。

ボクサーが試合中に抱き合うクリンチにも相手への恐怖を打ち消す効果があるといわれています。

どんな恐怖対象もそれと同化すれば一切の恐怖心は消えるものです。

理佳もまた最初に伽椰子の呪いにかかったとき、あまりの恐怖から同化を望んだのかもしれません。

つまりそれ以降の伽椰子は、本当に理佳自身だったとも取れるのです。

このように最後の理佳の不可思議なフラッシュバックは多くのことを物語ります。

『呪怨』がそれほど恐くない理由

The Grudge (Ju-on) [Import anglais]
『呪怨 劇場版』はJホラーの代表作でありながら非常に残念な点もあります。

あまりに恐がりすぎる登場人物たち

本作は名作ホラーゆえに多くの人は恐怖のハードルを上げて観るでしょう。それもあって「あまり恐くなかった」という人も多くいたはずです。

ホラー映画として最も残念な点は、登場人物のほぼ全員が恐がり・びびりという点でしょう。

もちろん女子高生などは見た瞬間に「キャー」と逃げるのが自然です。

しかし中年の遠山や年配の刑事までが伽椰子を見ただけで異様に恐れるのには違和感があります。

また少年お化けである俊雄を若い女性たちが恐がるのも不自然です。

1人くらいは「かわいい」と言って抱きしめても良かったのではないでしょうか。その後に恐怖演出があれば効果的だったでしょう。

仁美がTV映像の乱れをひどく恐がる演出も残念です。その後、仁美は自身のいるベッドのシーツにもぐりこんだ伽椰子を見て絶叫します。

それだけにTV映像を普通に見過ごしていた方がその恐怖はより伝わったでしょう。

登場人物がもっと自然で普通な感覚であれば、より恐いホラー映画になっていたのではないでしょうか。

伏線と構造

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『呪怨 劇場版』には続編の伏線も見て取れます。また、呪怨シリーズは全作品で楽しめる構造にもなっています。

1作目の大きな欠落が生んだ2作目の基本構想

『呪怨 劇場版』で最も不可解なのは、伽椰子の呪いがかかった佐伯家の事件が取りざたされないことです。

家の中に入った人やその関係者の大勢が不審死を遂げているのに、世間が騒がないのはあまりに非現実的なことです。

そのストーリー上の大きな欠落が、そのまま劇場版第2作の基本構想になったように思われます。

2作目では問題の佐伯家にオカルト特番のためにTVクルーが入ったりホラー映画撮影のために映画クルーが入ったりするのです。

世間で大騒ぎになった上で、伽椰子による怪奇現象をどうリアルに表現してゆくか。

この1作目で果たせなかった最大のテーマが、2作目における最大のチャレンジになったといえます。

フラグメント構造の映画の楽しみ方

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劇場版の1から2への直接的な伏線になるのは女子高生たちです。

1作目では女子高生のいづみが呪い殺されますが、2作目ではその友達の千春が同様の悲劇に見舞われます。

劇場版の前のビデオ版にも同じ女子高生が出ています。そのため彼女たちは初期の呪怨4部作をつなぐ大切な役割を果たしているといえます。

本作・劇場版1でもシリーズ全般としても、呪怨はパズルのピースがバラバラになったようなフラグメンツ構造になっています。

まったくバラバラのようでいながら、どこか部分的にリンクしているのです。

『パルプ・フィクション』や『キル・ビル』などタランティーノ監督の一連の映画もまたそのように各映画が薄くつながっています。

呪怨でも劇場版1の中には、2以外の他のシリーズ作品にも通じる伏線・パーツがあります。

そのため呪怨シリーズのファンになれば、様々なつながりを見つけるという別の楽しみ方ができるのです。

本作でファンになった方はぜひそれを見つけてください。