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佐野徹夜のデビュー作にして空前のベストセラー小説「君は月夜に光り輝く」が、2019年に待望の映画公開となりました。
まみずの最後の代行に隠された目的や埋め込まれたミスリードなど、映画を徹底考察していきます。
映画には描かれていなかった卓也の姉の死を原作をもとに解明していきます。
考察するほどまた観たくなること必至、映画の印象が変わるかもしれません。
最期の代行体験の目的
まみずが卓也に託した最後の代行体験の真の目的は、何だったのでしょう。
最後の代行体験は彼女がとても大きな愛で、卓也を包んでいたことを物語っています。
卓也が生きること(幸せになること)
最後の代行体験には、卓也へのメッセージが込められています。
まみずは卓也の中に「死」への憧れがあることを感じ取っていました。
だからこそ、卓也が自分の後を追って死んでしまわないように生きるという代行を依頼したのです。
劇中ではまみず同様に、卓也もまた生きることに執着せず、むしろ「死」へ歩みを進めています。
まみずは、自らの死を目前にして卓也に生きる目的をプレゼントしたのです。
「私の代わりに生きて」
まみずは、卓也と出会ったことで生きることへの憧れを持つようになります。
まみずが頼んだ最後の代行体験は「生きるという経験」を卓也の心の中のまみずに教え続けること。
まみずの最後の代行には、自分をずっと忘れないで欲しいという気持ちも見え隠れします。
卓也が生き続けることで、まみずもまだ彼の心の中で生き続けることが出来るからです。
卓也は残された人生のなかで、時折心の中のまみずに話しかけていくことでしょう。
まみずの真の願い
まみずが卓也に残した本当のお願いは「卓也が幸せになること」でした。
最後の代行体験で生きることを望み、そして最後のお願いで幸せになることを願っています。
まみずの願いによって、卓也はどんどん「生」に近づいていくのです。
彼女が願った最後の代行体験は、卓也を「死」から遠ざけていくものであり、まみずは死の直前まで愛する人を想っていたのですね。
人は死ぬ間際、何を思うのか考えさせられるシーンではないでしょうか。
卓也の姉は自殺?
映画では、卓也の姉である鳴子の死因をちらつかせるものの、はっきりとは描かれていません。
しかし原作ではもっと踏み込んで、鳴子が自殺だったことを表現しています。
キーポイントは中原中也の詩
劇中にも登場してきましたが、姉である鳴子の「死」を示唆しているのは中原中也の「春日狂想」です。
愛するものが死んだ時には
自殺しなきゃあなりません
引用:君は月夜に光り輝く/配給会社:東宝映画
この詩は冒頭部分で強烈なインパクトを投げかけてきます。