ここではルールから外れた者やよそ者は差別の対象となります。
フランチェスカの孤独
フランチェスカもイタリアから来たよそ者ですから、やはり住民たちから厳しい目が向けられていたのだろうと推測できます。
アメリカでは黒人差別が主に取り沙汰されますが、他の国から来た人も無言の圧力を感じていたことでしょう。
そんな時ロバートと運命的な出会いを果たしました。
彼もアイルランドの血が入っていますから、アイオワという土地で異国人として扱われます。
同じように否定的な目で見られる彼に対して一種の仲間意識が芽生えたことはいうまでもないでしょう。
別れを選択したフランチェスカ
ロバートとの幸せな日々はたった4日間。一時的な愛なのか永遠の愛なのか、フランチェスカの心は揺れました。
一度は荷造りをした彼女が考えを変えたのには「愛」以外の要因もあったのではないでしょうか。
誘いを断ったもう1つの理由
もちろん家族を置いて出て行ってしまえば、閉鎖的な住民たちの陰湿な攻撃対象になるのは確かです。
不満はありつつもそれなりに愛していた家族を犠牲にすることに罪悪感を抱くのは普通の感覚でしょう。
しかしフランチェスカはこの土地の人間たちと自分は違うというプライドに似た何かを持っていたように見受けられます。
少し周りを見下している節があるのです。
自分はもっと可能性を持っているのに、環境が邪魔をしているとさえ思っているのではないでしょうか。
そんな彼女がロバートとの逃避行を選ぶということは、今までの自分を捨てることになります。
それは自分の過去を否定する意味も含んでいるのです。
現状よりロバートの方がいいとなれば、現状を作った自分の選択が間違っていたことを認めなければなりません。
彼女ももう若くありませんから、人生の大半を否定するには年を取り過ぎていたのではないでしょうか。
自分可愛さにロバートの誘いを断ったという側面も見逃してはいけない要素です。
一心同体の2人
ロバートはフランチェスカが捨ててきた可能性そのものでした。
彼と一緒にいる時、フランチェスカは失った片方の自分を取り戻した気分でいたのではないでしょうか。
彼らは2人で1つの人格。一心同体なのです。
ロバートと一緒に町を出るのを拒んだことは、彼女が自分の可能性をまた放棄したことを意味します。
これから先死ぬまで家族と平凡な暮らしを送ることを選んだのでした。