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国内外で空前のヒットを遂げた『君の名は。』から3年。新海誠監督はその次作として『天気の子』を世に送り出しました。
2019年劇場公開から2ヶ月で興行収入130億円を突破、観客動員数も1,000万人を超え、2作続けて特大ヒット作になりました。
その一方で、裏設定が話題になりました。多くのファンによって映画や原作から読み解けるもう1つのストーリーが取りざたされたのです。
また主人公・帆高の最後の決断に批判が集まることにもなりました。そしてこの映画のメインテーマは何だったのでしょう。
今回はそういった点を掘り下げてゆきます。
裏設定のベース
雑誌編集プロダクションの経営者・須賀は映画の中で数々の不可解な言動をします。
それによって『天気の子』は隠されたストーリーを喚起する作品になりました。
帆高と須賀のシンクロするストーリーが軸に
『天気の子』の隠されたストーリー・いわゆる裏設定を理解するには、1つの基本認識が必要です。
それは16才の主人公・帆高と彼に仕事を与えた須賀の2人の人生がシンクロしているということです。
彼らはどちらも天気の巫女である女性と別々に恋をします。天気の巫女とは気候を操れる超能力を持っています。
帆高も須賀もそんな女性に恋をします。須賀の後に帆高が続く形でそれぞれ別の女性を好きになりました。
しかしその結末は対照的でした。それは帆高と須賀が最後に下した決断が真逆のものだったからです。まずこの点を押えておいてください。
須賀の妻の死因は巫女としての成就
42才の須賀の奥さんは亡くなっています。表面上の設定は交通事故による事故死です。
裏設定では彼女はヒロインの陽菜のように天気の巫女として天に召されたことになります。それは表面上の設定やストーリーとも合致しています。
須賀と妻の間にできた子どもはぜんそく持ちで、曇った日には外遊びができません。そこで生前の妻は晴れを願ったはずです。
そうして陽菜のように願いが天に通じて天気の巫女になったのだと推測されます。映画冒頭から降り続く長雨もそれを示唆しています。
須賀の奥さんはわが子を思って晴れの日ばかりにしたために天の怒りに触れる。
そこで人類に災いがもたらされないために人柱として1人で天のいけにえになる。
そして神は天候バランスを取り戻すために長い雨季を作った。こう考えると陽菜が晴れ女の力を発揮するまで雨続きだったことが納得できます。
裏設定が与えるストーリーへの大きな影響
この映画はさまざまな謎を残す作品になりました。しかし須賀の妻がかつて天気の巫女だったとすれば多くの疑問は解消されるのです。
須賀が帆高を助けたのには深い理由がある
映画の終盤、帆高は警察を敵に回しながら天に召された陽菜に会いにゆこうとします。須賀は自身の保身から最初は帆高を止めます。
しかしクライマックスの廃墟のビルでその考えを変えました。そこで不思議なのは須賀がその廃ビルで逃亡中の帆高を待ち伏せしていたことです。
まるで予知能力者のようにそこにいるのです。しかし彼の妻が巫女であれば、須賀もそこが天に通じていることを知っていたことになります。
須賀はそこで帆高と話すうちに、彼が自分と同じ運命にあることに気づきました。そうして警官に抵抗してまで彼を助けるのです。
須賀が帆高を助けたのは、自分と同じ運命をたどってほしくないと思ったからだと推測できます。
自分のように愛する人を失って一生後悔して欲しくない。そんな強い思いが須賀を突き動かしていたはずです。