出典元;https://www.amazon.co.jp/dp/B078WGWZN5/?tag=cinema-notes-22
「 それが見えたら終わり」というなんとも不気味で意味深な邦題まで付け加えられたホラー映画「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」。
アメリカのホラー映画の特徴といえば目に見えない怪物や超常現象を思い浮かべるでしょう。
加えるのであれば「助かったと安心したところに襲いかかられて終わる」後味の悪さも特徴的です。
しかしこの「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」は恐怖だけではなく、様々な謎を残して終わります。
以下ではミステリアスなホラー映画だからこそ難解なストーリーについて徹底考察していきましょう。
ホラー映画異例の大ヒット作
ホラー作家の巨匠として名高いスティーヴン・キング氏が1986年に発表した小説「IT」。
1990年、トミー・リー・ウォーレス監督により「IT/イット」として一度映像化されました。
本作は1990年にテレビ映画として放送された「IT/イット」が2017年にアンディ・ムスキエティ監督にリメイクされたもの。
放映時間は185分から135分へと縮まったとはいえ、2時間超えの長編です。
しかしホラー映画としては異例の大ヒットを記録しています。
北米での興行収入は3億2,748万ドルで、これは、M・ナイト・シャマラン監督のホラー映画No.1の大ヒットを記録した『シックス・センス』が稼いだ2億9,350万ドルを上回り、事実上のホラー映画No.1の大ヒットを記録。
引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/IT_(映画)
また自身の映像化作品には厳しい原作者スティーヴン・キング氏も絶賛し、ピエロ系ホラーの先駆けとなりました。
「“それ”が見えたら、終わり。」って?
実は原題は常に「IT」であり、 「“それ”が見えたら、終わり。」というタイトルは日本での公開に合わせて付け加えられています。
また「それ」とは単にITを直訳したものであり、登場する殺人ピエロ「ペニーワイズ」に対して子どもたちが使う呼称です。
ただ実際には、本作では「ペニーワイズを見た子どもたち」は生きています。
終わっていません。
「それが見えたら終わり」というフレーズは、ペニーワイズの連れ去り方から連想したのでしょう。
「IT」という単純なタイトルをいかに怖く見せるかという日本公開の際の宣伝文句が仇となりました。
事件前の登場人物たち
本作にはたくさんの登場人物が存在し、名前と顔を一致させるだけでも時間がかかります。
そこでペニーワイズが絡んだ事件が起きる前の主要な登場人物と家族構成などをキャストとともに一度整理しておきましょう。
この登場人物の設定こそが、物語を読み解く鍵となるのです。
ペニーワイズ
本作で不気味な殺人ピエロ「ペニーワイズ」を演じるのはビル・スカルスガルド氏。
スウェーデンの芸能一家出身という、なるべくして俳優となった彼は迫真の演技で子どもたちと観客を怖がらせます。
「IT」と呼ばれるペニーワイズは、肉体をもつときだけ「ペニーワイズ」という名前があります。
しかし「IT」の正体は、太古に宇宙から飛来してきてデリーの街に棲み着いた意識の集合体。
人間をはるかに超越する生命体であり、本体と呼べるものはありません。
オレンジ色に輝く虚無空間で、それを覗き込んだ者の脳に作用して死をもたらすのです。
実体をもたないので、ピエロ以外にも「相手の恐れるもの」の姿をとって現れます。
映画では「怖がらせてから食べる」としか触れられていません。
しかし実際は、相手の「恐怖」と「恐怖に染まった肉体」を食べるという、精神と物体両方の捕食を最良としているのです。
ビル
少年グループのリーダー役「ビル」を演じるのはアメリカ人ジェイデン・リーベラー。
「ヴィンセントが教えてくれたこと」でもオリヴァー役として抜擢された実力派子役です。
ビルは吃音症で、言葉がうまく話せません。
しかし自分になついてくれる弟ジョージーをとても可愛がっていました。
なので雨の日に外へ遊びに行かせたこと、風邪でついて行けなかったことを大変後悔しています。
なのに彼の両親は、息子ジョージーが大量の血痕を残して行方不明、死亡したというのに素知らぬ顔。
ここにもペニーワイズが子どもだけを狙う意味が隠されています。
リッチー
ビルの親友「リッチー」を演じるのは、カナダ人フィン・ウルフハード。
2019年全米公開予定の映画4本に出演しながらバンド活動も行うアクティブ派子役です。
リッチーは吃音を抱えるビルの大親友でお調子者。
しかしそのお調子者ぶりは、仲間はずれされる恐怖の裏返しの性格なのです。
常にビルと、エディとスタンリーの4人で仲良くしています。
ちょっぴり背伸びしたい少年らしく、「Fワード」を連発しているのも特徴といえるでしょう。
ベバリー
今作のヒロイン「ベバリー」を演じるのはソフィア・リリス。
ベバリーは学校で異性にだらしないとの悪い噂を流され、意地悪な女子たちからいじめられています。
さらに家では父親からの虐待に遭っている不遇すぎる女の子です。
いじめと虐待に屈せず1人で戦っていたため、「ルーザーズクラブ」では1、2を争う勇敢さをもちます。
しかし同時にベンに一目惚れされ、詩のしたためられた絵葉書をもらって喜ぶ少女らしい一面ももっているのです。
この歳相応の少女らしさによりペニーワイズに目を付けられ、そして年齢以上の勇敢さゆえに生還を果たすことになります。
ベン
ぽっちゃりした転校生の「ベン」を演じたジェレミー・レイ・テイラー。
ノークレジットの作品に多く出演しており、名前は知られていなくともその演技力は折り紙付きです。
ベンは転校生な上に図書館で本ばかり読んでいるので周りの子からは浮き気味。
その上いじめっ子ヘンリーにも目を付けられています。
行方不明者や殺人事件の急増に異変を感じ、街の地理や歴史について調査する学者肌な少年。
ただ優しく話しかけてくれたベバリーに一目惚れする思春期少年らしい一面ももち合わせています。
リメイク前では「幼い頃に父を亡くし、兄と母からいじめられている」という設定もきっちり明かされていました。
マイク
差別に苦しむ少年「マイク」を演じたのはチョーズン・ジェイコブス。
マイクは幼い頃に両親を火事で失った上、黒人だという理由でいじめられていました。
またリメイク前では街の地理や歴史を調べていた少年でしたが、今作ではその役割はベンへと渡っていますね。
転校生が転校先の街について調べる方が自然だとの解釈があったのでしょう。
彼は実家の精肉業を手伝うため祖父から屠殺を求められますが、生き物を殺すことへの恐怖が強い優しい性格をしています。
早くに両親を失い、同級生のいじめや祖父からの叱責から逃れるため、目立たないよう内向的な性格になっていったのでしょう。
エディ
喘息もちの子ども「エディ」を演じたのはジャック・ディラン・グレイザー。
彼は本作で俳優デビューを果たしましたが、「ビル・スカルスカルドの演技をカット間に褒めた」という逸話のある大物です。
ただ彼が喘息をもっているからか、彼の母親は異常に過保護で何事につけても彼の行動を制限します。
そしてエディが骨折した際には、ビルたちに「二度と息子に近づくな」と過剰な怒りを爆発させるのです。
スタンリー
臆病な少年「スタンリー」を演じたワイアット・オレフ。
彼はマーベル作品の「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」やその続編で、主人公の幼少期役として出演していました。
また海外ドラマにも多く出演しており、子役でありながら芸歴の長い実力派俳優といえるでしょう。
スタンリーはユダヤ人だという理由でいじめの標的になっています。
以上7人でわかることは、全員学校では孤立し、家族からも突き放されているということです。
孤独と恐怖がペニーワイズの好物ですから、これらの条件を備えた7人はペニーワイズの格好の獲物となります。
ただもしこの孤独や恐怖に打ち勝つことができれば、ペニーワイズを追い払う力を持ちうるのです。
ヘンリー
いじめっ子「ヘンリー」を演じるのはオーストラリア人ニコラス・ハミルトン。
10代前半から俳優を始めたにも関わらずオーストラリアのトロップフェスト短編映画祭最優秀男優賞を受賞しています。
またニコール・キッドマンとも共演している超実力派の子役です。