それが分かるのはカールがアリソンに自分の心の中をありのままに伝えた時です。
彼の本当のYESはアリソンの心の鍵を開け、自分の人生の扉も開けることができました。
口先だけのYESではなく、心からのYESがパスワードであり真のYESだったのです。
YESの弊害
時間は有限です。誰にとっても1日は24時間だし、1年は365日しかありません。
その時間を使ってあらゆるものにYESといってしまったら、本来出来たであろう何かにNOといわざるを得ないのです。
例えば職場で残業を頼まれた時にYESと答えれば、本来予定していた家族との食事の時間を犠牲にするはめになります。
または何か1つの事を極める方が自分を高められるケースもあるでしょう。
これらのことからも、何にでもYESというのは良いことだとは断定できないのです。
ポジティブは正義か
YESと言い続ける中でもちろん悪い出来事も起こりました。しかしカールはポジティブを貫きます。
昨今ではポジティブは正義、ネガティブは悪という風潮があります。
しかし常にポジティブであることに両手を挙げて賛成していいのでしょうか。
ポジティブは現実逃避
本当は受け入れがたい現実だったとしても、ポジティブ思考をすることで目を背けることができます。
これは現実逃避と何が違うのでしょうか。
目の前で起こっていることを受け入れたら自分が壊れてしまう。そんな時に現実逃避をします。
現実を受け入れるにはポジティブだけでは役不足な時だってあります。
ネガティブ思考で最悪の状況を想像したり、反省点を見つけることの方が数倍重要な場合もあるのです。
ポジティブは良くてネガティブはダメといった短絡的な発想が人生を豊かにしてくれるのかどうか判断する必要がありそうです。
思考停止
機械的にポジティブへ変換したとして、それは思考停止とさほど変わらないのではないでしょうか。
NOと言い続けた時もYESの誓約を立てた時も、カールは意見を自分の頭で考えることはしませんでした。
中身の無いポジティブでは真のイエスを引き出すことは不可能なのです。
皮肉まじりの本質
観客もただYESといえば物事が上手くいくのだと主人公同様錯覚したことでしょう。
確かに今まで出来なかった体験をするには、良い案かもしれません。
しかしそれでは自分の頭で考えて出したYESではないはずです。
皆さんちゃんと考えてますか?と問題提起することが、この映画の本質です。
この作品を観てYESさえいっていれば良いとかポジティブになろうなどと思い立った人に向けて皮肉を交えて訴えているのです。
自分の人生の主人公は自分です。誰かに答えを与えてもらおうと思うのではなく、己の心に耳を傾けてみましょう。