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『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』は、2019年12月20日(金)に公開するアニメ映画です。
本作は2016年に公開した『この世界の片隅に』に、新カットを追加された長尺編となっております。
戦争や、戦争の中でも懸命に生きる人々を描いた本作。
なぜ本作で追加された大事なシーンは、前作でカットされたのか。
またラストに登場するヨーコが象徴するものは何かにも迫っていきます。
『この世界の片隅に』から3年
2016年11月に公開された『この世界の片隅に』。
内容があまりに素晴らしいと、公開後から口コミもあって爆発的な伸びをみせた作品です。
ですが企画の段階では、資金集めすらできなかったことをご存知でしょうか。
「地味すぎる映画」と業界関係者から酷評され、資金が集まらなかったのです。
そのためクラウドファンディングで一般の方から資金を募った結果、上映にいたりました。
しかし『この世界の片隅に』では、原作にはある重要なシーンがカットされていたのです。
そのカットされたシーンを新たに追加したのが、本作です。
なぜ前作で大事なシーンをカットしたのか
本作で追加されたリンの物語
本作で追加された要素として、最も重要なものが白木リンと周作が両思いであったという物語。
リンと周作が両思いであったことは、すずの周作への反発やすずとリンとのやり取りにも意味を持たせます。
しかし『この世界の片隅に』では、リンはすずの道案内をするシーンにしか登場しなかったのです。
劇中では道案内のみで、エンドロールではリンのラフ画が流れます。
これは、本来『この世界の片隅に』にも白木リンと周作の物語を描くはずだったことを表しているのです。
ではなぜカットしたのか、理由は2つありますので、それぞれご紹介していきます。
監督が観客に原作の魅力にも触れて欲しかったから
一つ目は「片渕監督が観客に原作も読んで欲しかったから」です。
本作と前作の監督を務めた片渕監督は、白木リンの物語が非常に重要なものであることを承知していました。
承知していながら、あえてその物語を映画に入れないことで白木リンの存在感のなさを浮き彫りにしたのです。
片渕監督は、観客に映画を観て終わるのではなく原作まで読んでもらうことを望みました。
そのために、あえてリンの物語をカットしエンドロールに登場させるという方法を取ったのです。
すずというキャラクターへの愛情
二つ目の理由は「白木リンの物語を入れることですずが終始苦しんでしまうから」です。
すずの境遇が悲惨になっていったことは、映画を観た方は百も承知でしょう。
『この世界の片隅で』の前半では、持ち前の性格もあって、新天地でもそれほど苦労することなく溶け込んでいたすず。
しかし、本作では前半に白木リンと周作の物語が入ることで、すずは前半でも苦しむことになりました。
そのため本作では映画を通して終始苦しむずずがいます。