そこでクリスマスのようなほとんど誰もが祝う一大イベントがあると、大勢を1つにまとめることができます。
作中の終盤には学校でのクリスマス・パーティがありました。そこでほとんどの主要キャストが集まることで、映画が丸く収まるのです。
他の群像劇映画にもこのような統合ファクターがありました。
ロバート・アルトマン監督の『ショートカッツ』ではロスの大地震、ポール・トーマス・アンダーソン監督の『マグノリア』ではカエルの大雨。
群像映画には、そういう大勢のキャストを1つにまとめる仕掛けが必要なのです。
グランドホテル方式とは
作中では主に9つのラブストーリーがあり、総勢20人以上のメインキャストが出ています。
日本ではそういう映画を群像劇などといいますが、イギリスやアメリカではグランドホテル方式といいます。
『ラブ・アクチュアリー』はロバート・アルトマンの『ナッシュビル』などと共にグランドホテル方式の代表作になったといえるでしょう。
グランドホテル方式の由来はそのまま『グランドホテル』というタイトルの映画にありました。
『グランド・ホテル』(Grand Hotel)は、1932年のアメリカ合衆国のドラマ映画。メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)製作。
第5回アカデミー賞最優秀作品賞(1931年-1932年度)を受賞、アカデミー賞で作品賞だけノミネートされ、作品賞だけ受賞した最初で最後の映画でもある。
引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/グランド・ホテル_(映画)
この作品がまさにグランドホテルを舞台にした群像劇だったのです。
豪華ホテルには見ず知らずの人々が大勢宿泊しています。それはまさに映画やドラマの群像劇に最適なメタファーだともいえるでしょう。
ちなみに『グランドホテル』の主演男優を務めたジョン・バリモアは、あのドリュー・バリモアのおじいさんになります。
すばらしい群像劇に仕上がった3つの要因
映画はグランドホテル方式で出来ています。大勢がどっと出てくるのですが、不思議とまとまっています。その秘訣は何なのでしょう。
全員が主役になるような演出
総勢20人以上のメインキャストを普通に進行させてゆけば鑑賞者はこんがらがってついてゆけません。
それでは群像劇として破綻します。この映画ではそうならないためにまずキャラを総立ちさせました。
それぞれが主役になれるほどの全員を強烈キャラに仕上げたのです。それによって観る者はじょじょに1人1人を覚えられます。
良い群像劇とはまず全員を立てるキャラクタライズがしっかりしているのです。
登場時間の公平な配分
メインキャラ全員を立てることと共に、彼ら各々の撮影シーンの時間配分を平等に割り振ることも必要です。
この映画はそういうバランスの取れた構成でした。しかしヒュー・グラントやコリン・ファースなどは他のキャストに較べて出番が少なかったです。
彼らは誰もが知る大スターなので、あえて配分を少なくしたのではないでしょうか。
編集だけで4ヶ月を費やしたというだけあって構成力の光る映画に仕上がっていました。
キャストが微妙に絡まってゆく絶妙な構成
20数人のキャストが完全にバラバラではなく所々でつながっているのも、群像劇の混乱を抑止する要因になっているでしょう。
例えばヒュー・グラント演じるイギリス首相は、エマ・トンプソン演じるカレンの弟だということが終盤になって分かりました。
ロックスターのビリーはキャスト全員に絡んでゆきます。有名人なのでTVに出ることが多く、TVを通じて多くのキャストと触れ合うのです。
少年のサムは空港職員がTV出演中のビリーを見ていたおかげで税関をすり抜け好きな子に会う事ができました。