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クリストファー・ノーラン監督はバットマンの『ダークナイト』で知られるハリウッドの名匠です。
そんな名監督による2010年製作の映画が本作『インセプション』になります。
『インセプション』は日本でも難解な映画として知られているでしょう。
夢の中の多次元階層が目まぐるしく交錯するストーリー展開であり、混乱するのも無理はありません。
ここではそれを分かりやすく解説します。そしてラストに回り続けるコマが示唆することや、キャラの名前の由来。
また虚無が何を意味するのかについてじっくり解説してゆきましょう。
ラストに回るコマが意味するもの
作中ではレオナルド・ディカプリオ演じる主人公のコブが回すコマが目をひきつけます。一体それは何を意味するものなのでしょう。
トーテムのように信仰の対象とも重なるコマ
コブが回す小さなコマについて、コブの相棒アーサーはそれがトーテムだと指摘します。
トーテムとは一般的に部族などに崇められる宗教的な意味合いが込められたシンボルのことです。
トーテム・ポールという風変わりな彫刻のある柱を見たことがある人も多いでしょう。
コブが回すコマは基本、そこが現実であるかどうかを判断する基準になるもの。回り続ければ夢の中。止まれば現実というわけです。
コブは夢の中に入って要人の機密情報を抜き出したりアイデアを植えつけたりするスパイです。
そのためコマでその世界の虚実を確かめることは不可欠なことでしょう。
しかしコマは絶対の基準にはなりません。コブが夢にいても彼がそう願えばコマは止まるはずです。夢の中には人の潜在意識が反映されるのです。
その意味で、コマはトーテムのように信仰の対象だといえるでしょう。コマが出す答えには少なからずコブの感情や願望もふくまれているのです。
最後に残した大きな余白
コブが子どもたちに再会して映画はハッピーエンドを迎えます。最後のショットはコブが回したコマになり、回る途中でエンドクレジットが入ります。
鑑賞者には止まるのか回り続けるのかが分かりません。よく見るとコマが傾きかけるのでハッピーエンドの暗示と受け取った人もいるでしょう。
しかし作り手サイドとしては、映画の結末を観客の解釈にゆだねる形にしたといえます。映画は最後に大きな余白を残すことになりました。
観た人の多くはさまざまな想像をかきたてられることになったでしょう。物語はこういう終わり方の方がより愛されるものになるのかもしれません。
コマの行方によって変わる後日談
映画は回り続けるコマと共に終わりました。そのコマは2通りの真逆の後日談を喚起します。
大団円
もしコマが止まれば飛行機から降りた後の筋が現実になりハッピーエンドになります。
主人公のコブはサイトーとの契約を果たすことで妻の殺人容疑が解かれ母国アメリカに帰国。
子どもたちと再会し、亡き妻モルへの未練や罪悪感も断ち切ることができるでしょう。一方虚無に落ちたサイトーもコブによって現実に無事生還。
ロバートはインセプションで捏造された父の遺言により父が所有する大企業の解体を決定。父の真似ではない新事業を始めるでしょう。