コミックスの世界をそのまま現実に持ち込んだようなジム・キャリーの姿に「これこそスタンリーだ」と監督は心動かされました。
彼にしかできない!
コミックス「THE MASK」を実写化するにあたって、あの緑色の特殊メイクは欠かせません。
いくら高い技術で施されたメイクといえども、それを活かすも殺すも俳優の演技次第です。
ジム・キャリーの場合、あれほど凝ったメイクをされながらも激しく表情を動かすことができます。
またコミックス独特の過剰ともいえるダイナミックで軽快な動きをするのは、どの俳優でもできるというものではありません。
スタンダップコメディ俳優として活動していた彼は、そんな大胆な動きをするのは朝飯前だったのです。
彼の陽気で輝く演技が、ほぼ無名でありながら主役に大抜擢される要因になりました。
作中に投影されたアニメ作品
原作と映画ではマスクを被った主人公のキャラクターは正反対です。
悪趣味な殺人鬼から憎みきれないヒーローへ舵を切った監督は、子どもから大人まで愛されるあのアニメ作品を映画に投影しました。
トムとジェリー
映画「マスク」の代名詞といえば、竜巻のように回転したり驚くと目玉が飛び出すような誇張表現。
そのようなシーンは原作には無いため、参考にしたのが「トムとジェリー」です。
「トムとジェリー」はネコのトムとネズミのジェリーがドタバタ劇を繰り広げるアニメ作品で、その要素を映画に取り入れました。
ユーモアたっぷりで大袈裟なキャラクターを作り出すことに成功した映画「マスク」は、原作にも影響を与えたようです。
原作にも影響が
映画版が公開され、その人気はたちまち世界中に広まりました。
あまりにも人気になったため、原作が映画版に寄せてコメディタッチの作品にしたくらいです。
主人公が残酷な殺人犯に変身してしまうホラー作品だったのが、勧善懲悪ものに変更されました。
もしも映画制作会社が原作通りホラー作品を作ろうと押し切っていたら、今のような人気の映画にならなかったかもしれません。
監督の人を見る目と意志を曲げない姿勢があったからこその映画といえます。
そう考えると映画作りは監督の手腕が問われるのだと再確認させられるのではないでしょうか。
コメディだけじゃない魅力
現実ではありえないバカバカしい面白さと、ウジウジした気分を吹き飛ばしてくれる痛快さが楽しい映画「マスク」。
VFX(視覚効果)により、高い所から落下するとペチャンコになったりする演出を盛り込んだことでも話題になりました。
コンピュータグラフィックスや合成処理で映像を加工することによって、現実では見ることのできないシーンを作り上げています。
原作のまま制作していたら、ここまで高度な技術を必要としなかったかもしれません。
しかし時間とコストをかけたからこそ傑作コメディと称されるほどの名作になったことは間違いないでしょう。
そしてコメディの中に人間の複雑な心の揺れを描写し、ただの笑える映画から考えさせられる映画へ高めることができました。
人間は仮面を被っている
現代人はみんな仮面を被っていると聞いたスタンリーは試しに例のマスクを被ってみます。
全くの別人になれた彼は、勢いに任せてマスク生活を楽しんでいました。
気弱でダメダメな自分を全て隠してくれるようなマスクに心躍らせたスタンリーは、物語の途中から悩みはじめます。
スタンリーのジレンマ
マスクを被った時は超人的なパワーで陽気に暴れ回り、大胆にティナを魅了するスタンリー。