しかし本作が公開されたことで、児童文学とは思えないほどの人気となり、更に世界的にファンを増やしたのです。
本作の愛らしくコミカルなパディントンを観て、ぬいぐるみや原作の絵本などのグッズを購入する人も増えました。
ストーリーに隠された現実的な問題
世界的な問題を内包
本作はコミカルで愛らしいパディントンとブラウン一家との心温まる物語です。
しかし実は、ストーリーにあるメッセージが隠されていたことにお気づきでしょうか。
それは「移民問題に目を向けること」です。
人によっては本作のどこにそんな要素があったのかと眉をひそめる人もいるかもしれません。
しかしパディントンを移住してきた移民という目線で観ると、本作に内包されたメッセージをはっきりと読み取れます。
パディントンにみるイギリスの実情
パディントンが移民のように描かれているシーンを挙げていきましょう。
- 船に密航して、ペルーからイギリスに渡る。
- 道行く人に助けを求めるが無視される。
- 毛むくじゃらになるなど、街の住民に差別的な言葉を吐かれる。
ファミリー向けの映画であるため、あまりにも直接的な描写は避けています。
更にパディントンが熊だということで移民問題は表面上わかりません。
しかしパディントンの状況を人に置き換えてみるとどうでしょうか。
そこには移民として、移住した国に馴染めず、時に差別的な言葉も投げかけられる移民の問題を想像することができます。
英仏の合作だからこそのメッセージ
本作が公開した2014年は、EUはもちろん、特にイギリスでは移民問題が盛んに取り上げられていました。
そして2016年には移民問題の不満が爆発し、イギリスはEU離脱を国民投票により決めました。
移民問題がイギリスでもEUでもくすぶっていたなかで公開した本作。
移民問題のメッセージを込めて子供や大人にも届く映画として作られた本作。
この映画の意義がいかに大きいのかがわかります。
ブラウン一家か街の住民か
パディントンに隠された移民問題のメッセージ。
このメッセージを受けたとき、私たちは自分がブラウン一家かそれとも街の住民なのかを考えることになるでしょう。
移民という自分たちに馴染みのない存在を受け入れるのか、それとも蔑む、または排除しようとするのか。
受け入れるときには文化の違いなどがあるため、パディントンとブラウン一家のように衝突することもあります。
しかしそんな衝突を乗り越えた先には、本作のような互いを本当に思いやれる信頼関係が生まれるのです。
一部の街の住民のように移民を見て見ぬフリをしたり、差別的な言動を投げかけたりする人もいます。
後者のように振舞う人が増えたことが、現代のイギリスやEUの問題なのかもしれません。