劇場が崩壊し、エディ(羊の友達)の家に隠れている時に、励ますために訪れたミーナに心情を吐露します。
「怖くて怖くて仕方ない。」
「僕や君が恐怖を感じるのには理由があるんだ。本当はわかっているからさ。夢はかなわないって。」
引用:SING/シング/配給会社:ユニバーサル・ピクチャーズ
これまで一度もヒットした企画を持たないムーンは、自分の現状に気づきながらも気づかないふりをしていたことがわかります。
それでも恐怖で足がすくみながらも引きこもることはなく、彼は一歩を踏み出すことを選びます。
彼には文字通り、一肌脱いで支えてくれる友人がいたことでどん底から這い上がることができました。
父の言葉と応援してくれる仲間、一緒に汗をかいてくれる友の存在。
彼は何もかも失ったように錯覚していましたが、これまでの生き方でどん底から這い上がるために必要なモノを手にしていたのです。
エディの部屋の中にあったメッセージ
ムーンが失意の中、エディの部屋に隠れていた時に仲間たちが励ましに来てくれたシーンがありました。
エディの部屋の壁には、1977年に公開された映画「未知との遭遇」を思わせるポスターがあります。
そのポスターには「WE ARE NOT ALONE!」というキャッチコピーが書かれています。
これは「未知との遭遇」のキャッチコピーで、「宇宙にいるのは 我々だけではない」という趣旨のものです。
ただ、劇中では同じ文章を「一人じゃないよ」と意訳するのが良さそうです。
エディはお金持ちのボンボンで放蕩息子まっしぐらでしたが、友の窮地を見過ごさず、一人にはしませんでした。
彼はダメな孫・息子とみられていましたが、しっかりと男気のある羊に成長していたのです。
月のオブジェが暗示するものとは
冒頭にも書きましたが、本作は「満月から始まり、満月に終わる物語」です。
月のオブジェについて考察するために、劇中にある月を追いかけていくと面白い気づきがありました。
満月の劇場から物語は始まった
ナナ・ヌードルマンの舞台「epiphany」から始まりましたが、その舞台には満月が輝いていました。
「epiphany」とは「突然のひらめき」だったり「啓示」という意味を持つ単語です。
ムーンは文字通り「啓示」を受けショーマンとなることを決意しました。
月の満ち欠けからみる劇場の盛衰
次に月のオブジェが現れるのは、ムーンが給料の不払いや銀行からの取り立てから逃げるときでした。
その時の月の形は「明けの三日月」と呼ばれる形で、非常に頼りなく、弱い光を発するものとなっていました。
まさに、そのときのムーン劇場の勢いを表しています。
「明けの三日月」のあとには「新月」が待っているのも、未来を予測させる伏線としてのものでしょう。
劇場の崩壊と月
劇場が崩壊するとともに、月のオブジェも砕けてしまいました。
つまり、月が見えない状態である「新月」です。
一時は満月のごとく人々を魅了し、光り輝いていた劇場もついに見る影もなく崩れ去りました。
満月を背負う者の存在
太陽のようにあまねく照らす存在ではないものの、ムーンという人物の発する光を浴びて輝く姿は、まさに月を感じさせる存在です。
多くの演者が盛り上げた舞台にのぼり、劇場の復活を決定づけたのはミーナという新しい満月を背負う者の存在でした。
まとめ
劇場の再建のBGMは「GOLDEN SLUMBERS」であることには、どんな意味が込められているのでしょうか。
オープニングが同じ曲で始まったのは、ムーンをショーマンの道へと誘うためでした。
劇場の再建の際にも同じ曲を使うという事は、新たな夢の世界へと誘う伏線と考えられるのではないでしょうか。
事実、マイク以外のキャラクターが揃っての劇場前での集合写真は意味あり気です。
ムーンは新生ムーン劇場で、多くの仲間と共に新たな夢をみることになるのでしょう。
その夢の続きは続編で確認することにしましょう。