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ヴィンセントが宇宙に出発したと同時に自殺したジェローム。まさかの展開に驚いた人も多かったと思います。
人生に絶望したのなら自殺を図るのも理解できます。しかしこの時のジェロームはそのような負の感情を持っていたでしょうか?
そしてジェロームの死と対照的に、夢を叶えたヴィンセント。達成感に包まれたことは想像に難くないはずです。
やはり彼は夢を叶えたことによって本当に幸福になれたと考えるのが正解でしょうか?
ヴィンセントとジェローム、そして協力した周囲の人達の想いについて考察します。
ジェロームの苦悩
優秀な遺伝子を持って生まれたにも関わらず、銀メダルしか獲れなかった自分を許せないジェローム。
適正者の中でも優秀な彼は、自分に欠けているものがあること自体許せなかったのです。
矛盾と葛藤
ジェロームは下半身が動かなくなった今でも銀メダルや優秀な遺伝子であることにプライドを持っています。
でもそれは本心でしょうか。自殺未遂した時点でそんなプライドはもう存在しないはずです。
彼は弱い人間でした。虚勢を張らないと自分が壊れてしまいそうだったのです。
そんな彼もいつまでも過去にしがみついている自分を本当は許せないでいました。
このような矛盾と葛藤の中、ヴィンセントと出会ったのです。
遺伝子に潰された可能性
不適正者のヴィンセントと適正者のジェロームは全く正反対の存在のように思えます。
不適正者はどんな点においても適正者に勝ることはありません。身体能力にしても頭脳にしてもそうです。
それにも関わらず彼らには共通していることがあります。それは「遺伝子に囚われている」ということです。
ヴィンセントは最初から遺伝子優性社会に抵抗していますから、遺伝子に囚われていることは明白です。
ではジェロームの場合はどうでしょうか。
彼は生まれながら水泳の世界で金メダルを獲得することが運命づけられていました。
言い換えれば水泳以外の選択肢を排除されていたということになります。
もしも他のフィールドに自分の可能性を見出すことができたら、彼は追い込まれなかったでしょう。
優秀な遺伝子を持っているジェロームですから、他の競技でも充分力を発揮できたと思います。
ですが彼は水泳以外に目を向けませんでした。全ては遺伝子によって決められたことだと思い込んでいたのですから。
彼の可能性は遺伝子に潰されたといっても過言ではないでしょう。
遺伝子優性社会の犠牲者
ジェロームは水泳で金メダルを獲るために生まれてきました。それは彼の意思など関係無く決まっていたことです。
そのため自分にかけられた期待と、それに応えなければならないという責任を背負わされていました。
しかし結果は銀メダル。周りの人間がこの結果を許したとしても、彼は自分を許せなかったのです。
ジェロームは真面目な人なのでしょう。