2004年に制作され、未だに人気の衰えない恋愛映画の金字塔『きみに読む物語』。
ニコラス・スパークスの小説『The Notebook』を原作として2004年に制作された映画です。
ニコラスは「愛」や「運命」をテーマにした作品を得意としている作家で、まさに本作はその強みを凝縮したような作品となりました。
映画を愛する方にとっては「ベタ」な展開と評価されがちな今作。
果たしてこれは噂通り実話を基にしたストーリーなのか…。
もしそうなら、映画より映画みたいな実話ということになり、それはそれで驚きです。
ラストシーンに繋がる数々の名言の真意を紐解きながら考察してまいります。
このストーリーは実話?
何かを創作するとき、人はさまざまなところから着想を得て新たなモノを生み出します。
この映画も、原作者のニコラス・スパークスの配偶者の祖父母の実話に基づいて創作されたそうです。
どの部分が創作で、どの部分が実話なのか、映画に魅了された一人として気になるところですが、ほとんどは実話とのこと。
時代性はあるものの、ここまで相手を思い続けることのできる人生は幸せだったのだと思います。
ノアの父親がくれたもの
経済的に豊かではないノアの父親は、息子に対し多くのものを与えた尊敬に値する人物でした。
それを素直に感謝して受け取ったノアは、人生を良い方向へと動かすきっかけとしています。
詩の朗読の習慣
ノアの父親は南部の肉体労働者ですが、息子の吃音の克服のために詩の朗読をするという習慣を与えました。
経済的には豊かな生活ではないように見えましたが、心や教養は豊かでした。
大金持ちの娘であるアリーが遊びに来ても、嫉妬したりへりくだるわけでもなく、同等の一人の人として接することのできる人物です。
父親が与えた習慣は吃音を直すだけではなく、物語の軸となる「本の読み聞かせ」という術を与えました。
この習慣のおかげでふたたび出会ったアリーに詩の朗読をし、意図的かどうかわかりませんが恋人同士の距離感に戻れたのです。
また、認知症となった妻に対して過去を思い出してもらう手段として本の朗読をしているのも、この習慣があってのこと。
父親の息子に対する愛情が配偶者に対する愛に繋がるというのも、この映画の愛の深さを感じさせる演出になっています。
戦争から帰った息子に夢を与える
ノアが戦争から帰ると父親は自宅を売り、ノアの夢であった「ウィンザー農園」を手に入れる提案をしました。
戦争で多くのものを失った息子に対し、戦争を忘れ夢中になれる何かを与えたかったのでしょう。それがウィンザー農園だったのです。
農園は、ノアにとってアリーとの思い出の場所であり、アリーを取り戻したいノアにとっては唯一の希望となったのです。
父親がそれを知っていて息子にプレゼントしたのかどうかはわかりませんが、父親の息子に対する深い愛情に感動せずにはいられません。
ノアがアリーに与えたもの
父親と二人でウィンザー農園を改築し、立派な家を手に入れたノア。
アリーが訪ねてきたときに、彼女のために用意していた部屋を見せます。
ノアは、アリーとした初めてのデートの時に彼女が言っていた言葉を覚えていたのです。
絵よ
私の好きなこと
絵を描くの
普段は考え事で頭が混乱しているけど、筆を持つと、世界が静かになる感じがするの
引用:きみに読む物語/配給会社:ギャガ
ただ、これは画材や部屋という物質的なモノをプレゼントしただけではありません。
その部屋を目にした後にアリーのとった行動は、裸のまま夢中になって風景画を描くことでした。
普通に考えれば、長い時間、裸のまま絵を描くことは不自然です。
では何を伝えようと、そのような演出となったのでしょうか。
それは、婚約者と話した時の台詞から推察できます。
ノアといる自分と、あなたといる自分が全く別人みたいな感じなの
引用:きみに読む物語/配給会社:ギャガ
婚約者と一緒にいる時は両親や周りから望まれているアリーの姿であり、ノアといる時は自分の気持ちに正直な姿なのです。
つまり、絵を裸で描いているカットは、ノアと一緒にいる時こそが「素の自分」であるということを表現するための演出なのです。