当時ローグが残した治療記録を基に映画を製作しようと試みたのですが、そこで大きな問題に直面してしまいました。
その治療記録は英国王室の許可が無くては利用できなかったのです。
ジョージ6世はすでに他界し、その妻であるエリザベス女王に許可をもらわなければなりません。
エリザベス女王にとっても吃音との戦いは辛い過去。
自分が存命中には製作しないことを条件に、治療記録の許可を与えたのです。
エリザベス女王が他界した2002年から制作が開始されました。
製作開始までこれほどの時間を必要としたのには、王室の苦悩の深さが関係していたといえるでしょう。
監督の想い
「英国王のスピーチ」は実在の英国王を描いた映画です。監督はなぜ史実を作品にしようと思ったのでしょうか。
脚本家サイドラーの存在
「英国王のスピーチ」の脚本家であるサイドラーは幼いころから吃音に悩まされていました。
彼が吃音になったきっかけは第2次世界大戦のストレス。そんな彼を励ましたのがジョージ6世です。
吃音を克服し、ラジオで国民を励ますジョージ6世の姿はまさにサイドラーの希望でした。
ジョージ6世に対する感謝を作品にしたいと強く感じたサイドラーの存在があったからこそ「英国王のスピーチ」は誕生したのです。
製作開始まで30年も待ち続けることができたのは、ジョージ6世への敬意と熱い想いがあったからに違いありません。
監督の母が仲介役
ある日監督の母は「英国王のスピーチ」の台本を読む朗読会に参加し、その内容に衝撃を受けます。
すぐさま息子である監督に「英国王のスピーチ」を手掛けるよう伝えたのです。
監督の母はオーストラリア人でした。ジョージ6世の苦悩と向き合ったローグもオーストラリア人です。
オーストラリアはイギリスの植民地だった過去がありますから、その肩身の狭さは痛いほどよく分かったはず。
医者の免許も持たずイギリス人でもないローグが英国王からの信頼を受ける実話は監督にも驚きと感動を与えたに違いありません。
この史実を世界に発信したいという想いが監督の心に沸き起こったのは当たり前のことだったのではないでしょうか。
描かれなかった裏側
ジョージ6世が主役だったので兄エドワード8世は脇役に徹した映画になっています。
ジョージ6世が告白したように、王室の躾は一般人には想像し難いほど厳しかったでしょう。
同じ環境で育った兄弟ですから、エドワード8世にも相当なストレスがかかっていたはずです。
兄エドワード8世のトラウマ
作品中でのエドワード8世は離婚歴のあるアメリカ人女性に情熱を注いでいました。
確かにそれは事実ですが、彼が恋愛に溺れるには理由があったようです。
英国王室では王と妃が育児をしないことがルールになっているようで、乳母が全ての面倒をみます。
そのため王子達は両親の愛を充分に感じることができないのです。
ジョージ6世が吃音になり、エドワード8世が恋愛に溺れました。