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「マネシツグミは殺してはいけないのよね?」と父親に問いかける少女の瞳は不安げに揺れています。
少女の父親は弁護士でそのころ結果の見えている非常に厄介な事件の弁護を担当していました。
案の定、審議もろくにされないまま真実は藪の中へ。父親の言葉の正義だけが子供たちの中に刻み込まれていました。
今回は1962年公開、同年第35回アカデミー賞主演男優賞・美術賞を受賞した「アラバマ物語」について解説していきます。
アラバマ物語とは
1960年発刊でピューリッツァ賞を受賞したアメリカの女流作家ハーパー・リーの自伝的小説「To Kill a Mockingbird」を映画化したものです。
物語に出てくる少女のスカウトがハーパー・リー自身といわれています。
映画の時代背景を知る
南北戦争(1861年4月12日 – 1865年4月9日)によってアフリカ系黒人の奴隷は解放されました。
1930年代に入ると南北戦争前の白人優位で黒人蔑視の社会を取り戻そうとするリディーマーと呼ばれる団体が出現します。
そのことにより、1950年代頃になると再び黒人に対する迫害や差別が横行するようになっていました。
人種差別の実態
次第にアメリカはリディーマー系の政党勢力が強くなり、再び黒人の選挙権がはく奪されてしまいました。
その上「人種隔離法」という法が成立し公共の場所や施設・学校にいたるまで、黒人用と白人用と区別されるほど人種差別が過激になったのです。
アラバナ州の風土
アメリカ南部のアラバナ州は、古くからアフリカ系黒人の奴隷が綿摘みをし、綿の産地として発展しのどかな田舎町の一面があります。
メイカムはのどかでのんびりした田舎の雰囲気は残しつつ、黒人への人種的差別や白人同士でも貧困者への差別と偏見が根強く残る土地でした。
役柄の視点別に物語を展開させる演出方法とは??
この映画は表向きは人種差別が横行した時代の黒人が被告人にされたという、不平等さを描いている法廷映画という見方をされています。
しかし時代背景をふまえながら、この映画を観る上で注目したいのは登場人物の役柄の視点で考察するとメッセージがみえてくるという演出です。
スカウトとジェム兄妹の父親であり弁護士のアティカス、無実の罪をきせられた黒人青年トムと謎の男ブーに注目しましょう。