また、ブーケは花嫁が投げるものです。
その点でも、ビクトリアにブーケを投げたエミリーは、一瞬ではありましたが確かに幸福な花嫁だったといえます。
そしてそのブーケにはカスミ草はありません。
蝶が象徴するもの
ここでたびたび現れる、印象的な蝶について考えていきましょう。
蝶は世界各国で様々な象徴とされていますが、さなぎから蝶として生まれ変わるようすからキリスト教圏では「復活」の象徴として考えられています。
まさに、真実の愛を得て復活したエミリーの化身のような存在です。
冒頭エピソードで描かれた蝶
映画は、ビクターが蝶の絵を描き終えたあとに、蝶を閉じ込めていたガラスの入れ物から解き放つシーンから始まります。
最初のエピソードからすでにビクターの愛がエミリーの心を解き放つということを暗示しているのです。
エミリーを閉じ込めているものはトラウマから作り出された、裏切られた憎しみや、愛に依存する自分の心だったのではないでしょうか。
それを解き放ったのが、ビクターが与えてくれた真実の愛なのです。
地上に戻ったエミリーが見た蝶
また、最初にビクターと共に地上へ行った時にも一匹の蝶がふわふわと飛んでいる描写があります。
この時のエミリーは、望んでいたとおり愛する人と結婚ができると思っていたのです。
「長い間 暗闇にいたから忘れてたわ 月の光の美しさを」
引用元:ティム・バートンのコープスブライド 配給会社:ワーナー・ブラザース
目を潤ませてこう言うエミリーの、やっと心の暗闇から抜け出せるという喜びと期待を一匹の蝶が表しているようですね。
エンディングで飛び立っていった無数の蝶
そうしてやっとトラウマから解き放たれたエミリーは、美しい蝶の姿となって月に向かって飛び立っていきます。
切なくもあるシーンですが、非常に美しく希望にあふれているようにも見えるのではないでしょうか。
冒頭の蝶はビクターが解き放ちましたが、エミリーはビクターから真実の愛をもらうことをきっかけにして自らの力でトラウマから立ち直り、決断を下すのです。
そこにはもう悲劇の花嫁の姿はなく、力強ささえ感じます。
エミリーが得た「本当にほしかったもの」
一見すると、二度も花嫁の座を奪われた悲劇の話に見えますが、エミリーはもっと大きなものを手にしたのではないでしょうか。
「僕の誓いは?」「もう果たしてくれたわ 自由になれた 今度はお返しする番よ」
引用元:ティム・バートンのコープスブライド 配給会社:ワーナー・ブラザース
そう、彼女が本当に欲しかったものは「自由」。
今までとらわれていた、憎しみや、愛への依存から解き放たれることだったのです。
だからこの映画のラストシーンはハッピーエンドであり、希望に満ちたものであるといえます。
この物語を経たことで、エミリーはやっと本当の幸せを探しに行けるのではないでしょうか。
まとめ
ティム・バートンが描く独特の世界観の中で「死者の花嫁」によって真実の愛を伝えてくれる感動のストーリーを解説してきました。
死者の花嫁エミリーはずっと欲しかった「自由」を手に入れ、生きている時に感じることのできなかった真実の愛を知ったことでしょう。
とらわれているものからの解放を、蝶を用いることで見事に表現した本作は、見た目のキャラクターの不気味さとストーリーの美しさの対比も見どころです。
愛なくして見ることのできない作品ではないでしょうか。
蝶に込められた意味を知ってからもう一度作品を観ると、きっとビクターやエミリーの心の移り変わりがもっとはっきりと伝わってくると思います。
ぜひもう一度真の愛とは何かを感じ取ってみてください。