自分も同じような衝動を持ってしまわないかと心配していたのです。聖人君子のガンジーの大きなポスターは矜恃のようです。

そうして自己抑制をかけ、自分は犯罪者の親とは違う精神を培おうとしたのでしょう。

サイコパスの父

 翳りゆく夏 (講談社文庫) (日本語) 文庫 – 2006/8/12

レイプ犯の春の遺伝的な父は、やはり長身ハンサムで芸術的なセンスの高い男でした。

彼は共感力が桁違いに低いサイコパスのようです。人が苦しむのと自分の感情を完全に分けて考えられるのです。

サイコパスの性質は春にも遺伝しているのでしょうか?

14歳までの育った環境が暴力性を発芽させるかを決めるのであれば、春は犯罪に手を染めないはずです。

春は、家族に大事に愛されて育ちましたが、犯罪者の父の亡霊を消すかのように放火を繰り返しました。

これこそが、母の事件に苦しむ共感能力の高い証で、サイコパスではありません。

この放火の儀式が終わってからは、犯罪は行わないと思われます。

罪悪感と自己嫌悪

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春が異性を避ける理由

一つに、自分の出生を汚らわしいものと捉えているので、自分は女性と関わってはいけないと考えていると思われます。

だから、性欲に関することを全部自分から遠ざけたいのです。

もしくは自分は、女性と良好な関係を結んではいけない存在だと自分が普通に幸せになることを拒んで自罰しているのでしょう。

自己否定の先に得られた哲学

春の部屋の壁には、偉人のポスターが無数に貼られています。通常の青年なら女の子のポスターやもっとミーハーなものもあってもよさげです。

ところが彼は、そういった嗜好品を徹底的に排除し、正義のみを追求しています。

自分の欲求を徹底的に無視するという意味で徹底的な自己否定と同義です

けれど、その否定の先に見えた哲学は、得難い思想となり、多くの人の役に立っていくようになるかもしれません。

負の部分をバネにして生きる

春は、自分の存在を苦しみ悩み抜いて育ちます。

兄は大学院にまで進学しているのに、自分は高卒で定職につかず「世直し」と称し落書きを消す作業をアルバイトとしています。

まるで自分は教育を受ける価値がないと考えているようです。もしくは育ての親に負担をかけたくない、というところでしょうか。

けれど、彼には芸術的な才能があります。それを生かすも殺すも過去や遺伝子ではなく、現在の自分次第なのです。

人の本質が見える

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春は、ストーカー夏子の容姿が整形手術で全く別物になっていても、見抜きました。

人を表面では判断しない、本質が見られる人なのです。

その変わったものの見方や嗜好を犯罪に使うのか、別のことに役立てるのは選べます。彼は善を選んで生きています。

愛していた母を亡くした辛さ

泉水と春は、愛情に満ちた家庭で育まれました。母を愛していたからこそ、その母を傷つけ、死を早めたような過去の事件を憎みます。

過去の事件を憎むほどに、自分の存在が許せなくなる春は、その罪悪感を消すためであるかのようにレイプ犯である父を撲殺しました。

泉水が、駆け付けるのはわかっていました。それは、同じ母を持つ兄弟として強い絆を持つ家族としての、共有すべき儀式だったのです。

重力とはなにか

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