そして彼を突き動かすものは一体、何でしょうか。
ここからはフォレスト・ガンプという人間をさらに深く理解するためのポイントを順番に解説していきましょう。
母からの影響
フォレストは幼少のときから母にとても愛されて育ちました。
だからこそ彼は母の言葉を生きるための指針にしているのです。
ジェニーの例を見ても分かるように自分を傷つけるような両親を信じたりはしませんよね。
幼少期の両親との関係は、その後の人間関係を形成していくうえでのモデルとなります。
フォレストは母に愛されたからこそ、後に出会う人々に対しても強い「信頼感」を持つことができるのです。
「人から言われたこと」をやる天才
陸軍では上官の指示のままに従うことで「優秀」だと評価されます。
また親友のババからエビ漁に誘われたときも、ほとんど悩むことなく快諾しました。
極めつけはホワイトハウスでのワンシーン。
大統領からお尻の怪我を見たいと言われると、フォレストは公衆の面前であるにもかかわらずお尻をさらけだしました。
さらに元をたどれば、脚装具を壊して走れるようになったきっかけもジェニーの「走って!」という言葉です。
その言葉に従って走り続けることでフォレストは車と同じくらい速く走れるようになります。
ついにはアメフトの全米代表チームにまで抜擢されました。
もし少しでも不信感もっていたら、こうまで全力で他人の言葉に身を委ねることはできないでしょう。
このことからも母親との関係の延長線上に多くの人々への信頼感があることが分かります。
フォレスト・ガンプは操り人形ではない
それではフォレストは自分の意思が一切なく、人々のいいなりになるだけの人形のような存在なのでしょうか?
そんなことはありません。たとえ知能指数が人より劣っていたとしても、フォレストは何もできない無能な人間ではありませんでした。
その証拠にフォレストが自発的に、またときには人の言葉に逆らってまで行動したいくつかの「例外」が存在しているのです。
その行動を見ていくことで、フォレストを突き動かしているものの正体が分かってきます。
フォレスト・ガンプが自発的にやったこと
フォレストが自発的にとった行動として代表的なもののひとつが、アメリカの横断でしょう。
ジェニーとの幸福なひとときが終わったあと、フォレストは誰に頼まれるでもなく突如として走りはじめました。
そして走り続けたまま2年が経つと全米中にその様子が報道されます。
記者たちはフォレストに走る理由を聞こうとして世界平和のためではないか、ホームレス救済ではないかなど憶測を口にします。
あるいはフォレストが悟りを開いたのだと解釈して、多くの道連れがフォレストの後をついてきました。
人間はことあるごとに「意味」や「答え」を求めてしまうものです。
人生に意味はあるのか?
こんなことをして何の意味があるのだろう?
しかしフォレストにとって「走る理由」はどうでもいいものでした。
走るという行為そのものに「意義」があるのであって、「それによって何かが得られるから」という行動原理では動いていません。
ここにフォレスト・ガンプという人間の人生観があるといえるでしょう。
フォレスト・ガンプが人に逆らったこと
さらに特殊な例として、フォレストが人に言われたことに逆らって行動したシーンがいくつかあります。
最も印象的なのはジェニーが危険な目にあったときです。
ジェニーが「やめて!」と叫んでも容赦なし。あの温厚なフォレストが映画のなかで3回もジェニーを守るために相手の男を殴っています。
またベトナム戦争でゲリラの襲撃にあったときも、ここで死なせてくれとわめくダン小隊長に逆らって彼の命を救いました。
これらの共通点は「誰かを助けたい」あるいは「誰かのために何かをしたい」という気持ちからとった行動ということ。
自分ではなく相手のためになると信じたことなら、フォレストは危険をかえりみずに行動するのです。
フォレスト・ガンプが損得勘定をしない理由
以上に見てきたようにフォレストは「これをすると得だから」あるいは「これをすると損だから」という自分本意な理由では動きません。