アナは以下の有名なセリフを残してウィリアムの元を去っていきます。
And don’t forget… I’m also just a girl, standing in front of a boy, asking him to love her.
引用:ノッティングヒルの恋人/配給:ユニバーサル
<忘れないで欲しいの。私だって目の前の男性に愛されたいと願うごく普通の女なのよ。>
そこまで言わせるか、と観客のイライラはピークに達します。
このシーンが次の記者会見でのウィリアムの態度の変化に繋がり、観客はカタルシスを得る大団円となるのです。
アナはなぜ「花嫁」の画をウィリアムに贈ったのか
シャガールの絵は、二人の結婚式の時に用意されたウェディングケーキにもモチーフの一つが登場しています。
「チェロを弾くヤギ」です。二人にとって幸せのアイコンであるシャガールの「花嫁」の秘密を解いていきましょう。
アナがウィリアムの部屋を訪れたときに、部屋の中にシャガールの「花嫁」の画が飾られてあることを見つけます。
二人はシャガールが好きだったのです。
二度目のロンドン訪問でウィリアムにフラレてしまうアナは、紙に包んだ本物のシャガールの画を置いていきます。
店を去るアナは持ってきた荷物をちょこっと指差してみせます。
ジュリア・ロバーツのさりげない演技にキュンとなるところです。
なぜアナは「本物」のシャガールをプレゼントしたのでしょうか。
それは画が「花嫁」とその幸せを描いたものであること。それは以前に二人で語り合ったことでした。
アナが去った後、紙を破いて画を見たウィリアムは、「私の幸せは、あなたなのよ」とアナが語っているのだと理解したのでした。
アナのこの行動は先の決定的なセリフと合わさって、ウィリアムの記者会見での行動に結びついていきます。
まとめ
いつまでも愛されるロマンス映画「ノッティングヒルの恋人」。この映画が愛され続ける秘密が二つあると思われます。
一つが冒頭にも書いた「ギャップ」を超える勇気と爽快感。もう一つはストーリーにばっちりフィットした配役でしょう。
格差を乗り越えることを見守る観客
「ローマの休日」と本作が大きくことなるのは、エンドで二人が結婚することです。
王室と女優を同列には比べられないかもしれませんが、ありえない状況がゴールまで描かれる痛快感は本作の特徴といえるでしょう。
さらに、困難を抱えながら乗り越えて愛を育もうとする女優。
そして、恋愛に臆病ながらも、アナを一人の女性として愛する事に成功したちょっと情けないけど心の広い男。
格差を乗り越えて大願を成就する二人。観客はハラハラ、イライラしながら二人を見守り、祝福できるのです。
ベストな配役
二つのキャラクターがジュリア・ロバーツとヒュー・グラントというピッタリの配役を得ていきいきと描かれています。
そして彼らの演技は自然体でおしゃれ、かつ軽快。素敵なセリフと四季が彩るノッティングヒルの光景。
特に最後の記者会見でのウィリアムの型破りのプロポーズは、これまでさんざんイライラさせらてきた観客にとって溜飲を下げるシーンです。
交わされる会話もとてもおしゃれでウィットに富んでいます。
さりげない演技が生きるようにセリフを抑えて説明的になりすぎることを避けた脚本と演出はロマンス映画の教科書のよう。
普遍的・王道的なストーリーとハマったキャスティング。
よく考えられた構成もあいまって「ノッティングヒルの恋人」は今も輝き続けています。