花は淳悟に向って口パクで言葉を投げかけます。気になる内容ですが「おめでとうは?」と言っているようです。
この言葉の真意は一体どういったものなのでしょうか。
長年の経験から、淳悟の言動や思考をよく理解している花は彼女は婚約者すらも2人の関係へ持ち込み、淳悟を独占する気満々の様子です。
したがって花と淳悟の関係はこれからも続いていくと考えて良いでしょう。
冒頭の学生時代のシーンで見せた、花の堂々たる態度がここに繋がってくるのです。
まるで主導権をすべて握っているかのような口パクで「おめでとうは?」とねだるシーンは、淳悟さえ従わせるような強さを感じます。
また花の相手の婚約者は非常に好青年で、2人と対面するシーンがあることで、花と淳悟の歪んだ関係と対比されているのです。
婚約者は2人の異常な関係に圧倒されるような描写がありますが、一体どちらが正義なのでしょうか。
花と淳吾側、または婚約者側。どちらの時点で見るかによって受ける感情が変わるシーンとなっているといえます。
ラストシーンからみる花の異常さ
ここまでは淳悟が主軸となり、この関係を保っていたように感じる描写が多く登場していました。
しかし最後のシーンは違います。2人だけの世界がクローズアップされる本場面。
ここから花が主体的に男女の関係を望み、淳悟を誘導しているのが分かります。
淳悟は根本に寂しさがある男性であり、少々歪んではいるものの彼なりの家族像を作り上げたいという、ただそれだけの純粋な想いの持ち主でした。
しかし花は幼い頃の経験から、何処かネジの外れた女性になってしまったのです。
一般的に近い親族の間で起こる恋を描く場合は、男性側がリードし女性側がそれに応えるといった内容が多いでしょう。
本作はそんなも常識も覆す作品となっています。
時系列
本映画の時系列は過去から現在へと展開していました。
小説版では時間が徐々に遡って展開していくため、こちらも映画「私の男」ならではの演出の1つです。
このように映画用にわざわざ演出を変更したのには理由があります。それは視聴者へ与える心象です。
仮に小説のように時系列が現在から過去への変遷であれば、視聴者は先に花と淳悟の関係を理解した上で物語が始まります。
冒頭で彼女たちの特別な家族としての関係を突然知ることになりますので、先に現れるのは驚きの感情でしょう。
今回のように過去から現在へ順に表現することで、2人の生き方を一緒に見ていくことができるのです。
歪んだ愛を描く作品だからこそこの展開が重要ですね。徹底的に視聴者のことが考えられた演出といえるでしょう。
まとめ
ここまでは二階堂ふみさん、浅野忠信さん出演の映画「私の男」を解説してきましたが、いかがでしたか。
リアルな愛の描写と家族の形を考えさせられる作品に仕上がっていましたね。
家族というフレーズに強いこだわりがあるが故、互いに執着しあう関係性が深い物語。
また、幼少期に負った傷はその後の人生に多大なる影響を与えることも、この映画からは如実に伝わってくるメッセージです。
当サイトには他にも二階堂ふみさん、浅野忠信さん出演の作品を考察した記事があります。