ハッピーエンドなのか否か、その答えははっきりと言い切れるものなのでしょうか。
ハッピーとは言い切れない危険性
人間が生きていくなかで、犯罪や自殺といったものはすぐそばにあるものです。
特に劇中に登場するような学生時代は、見方によっては死と紙一重ともいえるのではないでしょうか。
ラストシーンで「それ」が追いかけてくるのは、常に犯罪や自殺といった危険が潜んでいることを意味しているのです。
前を向いてしっかりと歩いていけば、悲劇的な死に捕まることはありません。
前を向き進む2人の姿は大丈夫でもあり、まだまだ先には危険があるということを示しているのでしょう。
作品に込められたメッセージ
本作はホラー作品ですが、人の内側に訴えかける作品です。
死の恐怖から逃れようと、「それ」を他人へうつしたヒュー、プールのシーンが象徴するように死と正面から向き合ったポール……。
死は常に側にあり人生は引き返せない、だからこそ道を間違えるな、という強いメッセージを感じます。
前を向いて歩き続けている限り「それ」に捕まることはないのです。
一定のスピードで追いかけてくる「それ」は、年老いて歩みが遅くなった時に自然と追い付かれるものなのでしょう。
この独特の視点での演出は監督デヴィッド・ロバート・ミッチェルの特徴でもあります。
本作より先に手掛けた「アメリカン・スリープオーバー」でも、彼独特の視点からの演出が話題となりました。
『イット・フォローズ』特有の死への恐怖は、この映画の魅力のひとつと言えるでしょう。
メッセージ性の高いホラー映画
『イット・フォローズ』は難解な映画といわれていますが、難解だからこそ魅力ある映画といえるでしょう。
「それ」について最初から最後までネタバレされず、明確にされなかったことで心の奥に漠然とした恐怖が残ります。
観客の持つ想像力を恐怖へと変えているのです。
まさに巧みに作りこまれた、新感覚ホラー映画といえるのではないでしょうか。
本作に隠れる「それ」にフォーカスを当てて観返してみるのもいいですね。