出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B00GCH696Y/?tag=cinema-notes-22
2012年に公開された映画『最強のふたり』は、日本で公開された歴代フランス映画の中でも興行収入堂々の第1位を記録しています。
とある事故をきっかけに首から下が全身麻痺というハンデを負ってしまった車椅子生活の大富豪フィリップが主人公。
そしてフランス郊外のスラム街の出身である貧民層のアラブ系青年ドリスがその相方として登場します。
出自も境遇もまるで違う二人が次第にお互いに心を許し合い、理解者へとなっていく人生ドラマです。
介護する側とされる側という関係から、やがてかけがえのない友達になっていく様子に胸を打たれた人も多いことでしょう。
ここでは貧富の格差や健常者、障害者という壁を乗り越え、二人が友達になった理由を考察していきます。
そして映画のラストが示す意味やフィリップの心の負担と彼の職業にも迫っていきましょう。
相反する二人の立場
それぞれの住まいからみる貧富の格差
この映画に登場する二人の主人公、フィリップとドリスは、それぞれの出自、境遇において何もかもが違います。
そんな二人が介護する側される側として寄り添っていくわけですが、そこには当然利害関係がありました。
アパートの一室に家族と身を寄せ合っていたドリスが、介護を必要とする大富豪フィリップの世話をすることでどんな人生を歩んでいくのでしょうか。
こうした貧富の格差に注目して映画を観てみれば登場人物の些細な心の変化にも気が付きます。
契約どおりあなたには個室が与えられる
引用元:最強のふたり/配給会社:ギャガ
例えば、フィリップの介護係に任命されたことで大豪邸の一室を自分専用の個室として与えられたドリスの浮かれぶりにも、納得がいくのではないでしょうか。
健常者と障害者
車椅子での生活を余儀なくされている障害者のフィリップは、常日頃より腫れ物を扱うように接してくる周囲にうんざりしていたのではないでしょうか。
障害者の自立と社会参加を助けたいという理由でフィリップの介護人として応募してくる人が多く、フィリップが心を開こうとしないのも理解できます。
フィリップは自分のことを障害者だからと特別扱いしてほしくなかったのです。
それを象徴するかのように、劇中には彼がそういった同情や哀れみを好まないことを表している台詞があります。
彼は私に同情していない
引用元:最強のふたり/配給会社:ギャガ
友人であるアントニーにドリスのような粗暴な男を介護人として雇った理由としてフィリップはこのように答えたのです。
この言葉からも、彼が障害者だからといって同情されたくないんだという気持ちが見て取れますね。
ドリスにはそんな境界線などそもそもなかったのかもしれませんが、どういうわけかフィリップのお眼鏡にかかったというわけです。
社会的ハンデを背負っているということ
字は読めるんだろうね
引用元:最強のふたり/配給会社:ギャガ
些細なミスを犯しフィリップに呆れられる様子からも、ドリスはこれまでまともな生活をしてきていないと推察できます。
簡単な文字や文章は読めるようですが、彼の識字能力はあまり高くないことも劇中のシーンから明らかです。
さらにドリスには宝石強盗の前科があり、半年間刑務所で服役をしていたという過去もあるのですから、アントニーが心配するのも当然ですね。
二人には様々な相違点がありますが、その一方である意味では二人共、社会に対し何らかのハンデを背負っているという部分が共通しているのではないでしょうか。
フィリップに対するドリスの対等な接し方の理由の内の一つには、こういった部分が関係しているのではないかと読み解くことができます。
二人の出会い
フィリップとドリスの関係が最初は決して良好なものではなかったことは、出会いのシーンから分かります。