ジェフリーは、亡命が事実ならアメリカが政治的にソ連に対して優位に立てると踏んだのでしょう。
亡命の核心をさぐるジャックの本心は、レッドオクトーバーの亡命を政治的に利用されたくなかったと思われます。
ラミウス艦長は、軍事関係者としてリスペクトできるだけでなく、人間的にも興味のある存在だったからです。
ジャックライアンが亡命を確信した理由
ジャックライアンはレッドオクトーバーの亡命説を主張しますが、亡命を確信した理由はどこにあるのでしょう。
アメリカ側の立場からレッドオクトーバーの亡命の理由を考察してみました。
レッドオクトーバーとソ連の動きから冷静に分析したジャック
ジャックが最初に考えたのは、レッドオクトーバーと追従するソ連軍の動きでした。
なぜ撃沈命令をソ連が出したのかがわかりません。自軍の最新鋭の原子力潜水艦を攻撃するなど考えられないからです。
ソ連がレッドオクトーバーを阻止する理由は2つ、暴走してアメリカに突っ込むかソ連に反旗をひるがえしたか。
ラミウス艦長と面識のあるジャックは、冷静沈着で毅然とした態度の印象から暴走するとはとても思えなかったのです。
ソ連に反旗をひるがえす根拠を考えていたジャックは「レッドオクトーバーは逃げている」と直感したのだと考えます。
亡命を裏付けるラミウス艦長の出生と現在の環境
ラミウス艦長はリトアニア生まれでした。
リトアニアは第二次世界大戦中にドイツとソ連の侵攻を受け、ソ連に編入された歴史があります。
ソ連に忠誠を誓うロシア人とラミウス艦長には、軍人としての温度差があるのではないでしょうか。
ジャックは、ラミウス艦長には子供がいないこと、現在は夫人に先立たれて独り身であることも知っていました。
亡命したからといって、家庭環境から個人的に困ることは何もないのです。
レッドオクトーバーの出航日が、ラミウス艦長の亡き夫人の一周忌だったことが推理の決め手になりました。
意思の疎通と友情の絆
亡命には相手国の対応が大変重要です。ラミウス艦長もアメリカが分かってくれれば必ずうまくいくと考えていました。
対面で会えない状況下で言葉の通じない相手とのコミュニケーションを取る方法は困難です。
ジャックとラミウス艦長がとった方法は、相手の立場になって考えることと、本気で相手を信じることでした。
思想や考え方、文化の違いを乗り越えてお互いに通じ合うことは可能なのです。
アメリカ政府のように、相手よりも優位に立とうとすると目の前の真意が見えなくなると思われます。
常に同じ目線で向き合うことこそが平和に導くかたい絆を結ぶ方法なのではないでしょうか。
まとめ 亡命の目的と平和への夢
レッドオクトーバーがジャックの故郷の静かな入り江にたどり着いて船上で話すラミウス艦長とジャックライアン。
ラミウス艦長の亡命の目的は、レッドオクトーバーがアメリカを攻撃するために設計されたからだと伝えます。
アメリカ攻撃を阻止したラミウス艦長の真意は、無意味な戦闘の阻止と自由を手にするという夢の実現だったのでしょう。
プライバシーも許されないソ連の体制から抜け出して、自由な国アメリカで安堵(あんど)の日々を過ごしたかったのだと考えます。
海は人々に新しい新しい希望をもたらす。ラミウス艦長は、新しい海で釣りを楽しんでいるでしょうか。