彼はひょんなきっかけで悪い投資話に乗っただけなのですが、それは人間の欲がなせる技であり、私たちが陥る可能性が高い罠だと考えられます。
警官に扮した2人組のシーンを挿入するだけで、人間の欲深さにまで言及してしまう監督の力量が表れているのではないでしょうか。
カウンセラーの電話相手は誰?
カウンセラーが電話をかけた相手は、メキシコの有力者へフェでした。
へフェは重要な分岐点でカウンセラーが間違った決断を下してきた事に言及します。
自分の世界は自分で作る
まるで私たちに戒めの言葉を送っている様なへフェのセリフは身に染みます。
ここでの言葉は監督からのメッセージとして聞くのが正しいのかもしれません。
へフェの言うように、カウンセラーはこの場面に到達するまでに何度も選択を迫られながらも無視してきました。
宝石商・ウェストリー・バイカー…どこかで正しい決断ができたなら、最悪の事態は免れたはず。
自分が下した決断が未来を作るという事実を、カウンセラーは身をもって知ったのではないでしょうか。
あなたもカウンセラーと同じ
カウンセラーの事例は非現実的ですが、自分の下した決断が自分の世界を作るというのは私たちにももちろん当てはまります。
人生は選択の連続で、日常生活においても「目覚ましが鳴った」→「起きるor二度寝」というささいな選択から1日が始まっているのです。
二度寝したせいで先を急ぎ、事故に巻き込まれるなんていう未来も起こりえます。
未来のことは誰にも予想できませんが、考えもなく選択し続けると、それなりの世界しか訪れません。
へフェのセリフは「あなたとカウンセラーは同じですよ」と言っているように聞こえます。
マルキナが口座を狙った理由
大麻を横取りして大金を得る計画が失敗に終わった代わりにウェストリーの資産を奪おうと、彼の口座を狙いました。
ウェストリーはカウンセラーの仲介役になった代償をマルキナに払った形になります。
この口座はマルキナの手先がとってきたものですが、この手先の女性はカウンセラーとは違い、賢いようです。
なぜなら任務の対価として得られるはずの謝礼を断って立ち去ったのですから。
普通ならこんな任務を無償で受けるのは割りが合わないと思うでしょう。
ですがこの女性は謝礼を受け取ってマルキナとの関係を続けるよりも未来の自分の世界を見据えてここで手を切ったと考えられます。
目先の欲より大切な事は何なのかを教えてくれる場面でもあるのです。
ダイヤは警告の石
カウンセラーが初めて選択を誤ったのがダイヤの指輪を購入する時です。
宝石商のセリフはこれからカウンセラーに起こる悲劇を予言するかのようでした。哲学的で抽象的なその内容に解釈を加えてみたいと思います。
減点方式
ダイヤの価値を見極める時、美しさではなく傷や欠点を見つけるといいます。
その採点方法はマフィアの世界にも適用されるようで、ヘマをやらかしたり疑われた時点で抹殺対象になるとのこと。
そのため、麻薬を横取りした犯人として目をつけられたカウンセラーは減点されたダイヤと同じ。
どれほど挽回しても加点されない運命だということが分かります。
ダイヤの代償
永遠の価値を持っているダイヤと限りある命を持つ人間の対比がなされます。人間は有限であるからこそ儚く美しい。
そこに気付かずにダイヤの価値にしか目を向けないのは人間の愚かさゆえです。そんな愚かさを代表するのがカウンセラーなのではないでしょうか。