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2018年にフランスで制作された映画「シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢」は驚くことに実話を基にした作品です。
中肉中背の締りのない肉体は、彼らの人生を物語っているかのよう。
中年おじさんがシンクロをする絵面は滑稽なのですが、なぜか愛おしく感じてしまいます。
今回はそんなシンクロ映画で、中年男に夢を与えたコーチの指導術と詩の朗読が働きかけたものを中心に考察していきましょう。
詩の朗読が働きかけたもの
シンクロの練習と詩の朗読はあまりにもミスマッチで、コメディ要素を入れたいがための設定だったように見えます。
しかし意外なこの組み合わせはあながち間違いでもない可能性があるのです。その理由を2つ説明していきます。
アルコール依存症に音読は有効
デルフィーヌがチームに詩の朗読をしていたのは、彼女がアルコール依存症であることと関係があると思われます。
アルコール依存症の支援団体では、詩の朗読をリハビリの1つとして取り入れている所が多く存在していることをご存知でしょうか。
基本的には依存症患者自身が書いた詩を読むのですが、既存の詩や小説などを音読するだけでも効果があるようです。
音読すると脳がスッキリしたり精神を安定させます。それに「幸せホルモン」も分泌するらしいです。
つまりデルフィーヌはもともと自分自身のために詩の朗読を始めたのではないかと推察できます。
そして自分と同じように悩みを抱えたおじさん達にも朗読を聴かせようと思いついたのではないでしょうか。
朗読セラピー
詩の朗読は話し手だけに効果があるわけではありません。
例えば幼い頃に親が絵本の読み聞かせをしてくれた事を思い出すと分かりやすいと思います。
親から語られる物語に、子供は空想を広げて楽しい気持ちになったり悲しみを感じたり。
ストーリーに感情移入させ、心を動かす力が朗読にはあるのです。
これは大人にも有効で、デルフィーヌの詩の朗読によってチームみんなが同じ想いを共有できたのではないでしょうか。
彼らの悩みはまちまちでしたが、詩の朗読によって心を一つにすることができたと考えられます。
中年男に夢を与えたコーチの指導術
コーチはデルフィーヌの他にアマンダもいました。
なぜ監督は2人の、しかもタイプが正反対のコーチを登場させたのでしょうか。その意図を考察したいと思います。
デルフィーヌの指導術
デルフィーヌは技術面の指導はしていませんし、する気もなかったように見えます。
彼女はベルトラン達に欠けていると思われる精神面の安定にフォーカスした指導を目指していたのではないでしょうか。