非常にテクニカルな心理戦でありますが、ここで徹底して美紀に関する部分をぼかしているのです。
この二つがあることで佐野美紀という女性を巡る思い違い・ミスリードが完成しました。
北沢と島崎
そしてまた、北沢自身も神野にかつての同級生”島崎”の名を騙って探偵として近づいてきました。
これは北沢自身が他人を完全に信用出来ないから取り繕ったあだ名なのですが、これも誤解の一因です。
実は神野は既に北沢が島崎ではないことを正確に見抜いているのですが、これも後半まで伏せられています。
こうして、二重にも三重にも多方面から”思い違い”を作り上げることででっち上げは完了しました。
どんでん返しの真相
こうして様々な”思い違い”が積み重なってのどんでん返しには思いも寄らぬ真相がありました。
果たしてそこには何が待ち受けていたのでしょうか?
神野と木村、そして美紀はグルだった
何と神野達は最初からグルで徒党を組み北沢をはじめ周囲を欺いていたのです。
逆にいいますと、本作はここでまず最初感情移入の対象である神野に裏切られたことになります。
この視点の切り替わりが実に鮮やかで、一見脳天気な神野こそが実は一番強かでした。
そして同時に木村と美紀の間にも実はただの友達、同級生以上の関係はなかったのです。
思えば冒頭のシーンからして手紙を渡していましたが、ラブレターだとは示されていません。
一歩間違えると興醒めしてしまう落ちをギリギリの所でそう見せない手腕に脱帽です。
美紀の父らしき人は刑事
神野と木村がグルになってまで美紀を匿った理由が大黒と片岡という二人のヤクザから守るためでした。
ここでもう一つ判明した真相は美紀の部屋に映っていた父らしき人が実は刑事であったということです。
この間取りや距離感も絶妙で、新婚夫婦に厳しい頑固親父かと思いきやテレビで情報収集をしただけでした。
この辺りの構図の見せ方も画面設計が完璧で、まんまと神野の術中にはまっていたことになります。
一番の被害者は北沢
そしてどんでん返しの煽りを一番食らったのは他ならぬ島崎を騙っていた北沢でしょう。
彼は一見エリート探偵かと思いきや、実際は神野の掌の上で踊らされていただけでした。
それは最後に立場が逆転した際、それまでやられっぱなしだった神野がいい放つのです。
あんたみたいな生徒どのクラスにもいるんだよ。
全部わかったような顔して勝手にひねくれて、この学校つまんねーだの何だの。
あのなあ、学校なんてどうでもいいんだよ。
お前がつまんないのはお前のせいだ。引用:アフタースクール/配給会社:クロックワークス
そう、神野から見た北沢は大人になっても背伸びした反抗期を引きずった子供に映ったのでしょう。
思えば、島崎の名を騙り他者との交流を拒む時点で彼は自分の殻をまだ破れていなかったのかもしれません。
もっとも、こんな壮大なだまし討ちを食らえば北沢でなくとも怒りたくもなろうというものですが…。
写真を危惧した理由
そしてもう一つ、「アフタースクール」の伏線であった写真、これがかなり大きな役割を果たしました。