先述の通り自らの棋風を捨ててまで零との戦いに臨んだ後藤でした。
ですが、その心構えの差が零にほんのわずかな反撃の糸口を与えたのかもしれません。
かつて零は、後藤戦を見据えるあまり島田に敗北を喫したことがありました。
後藤が敗北した理由も、それと同じような勝負事のちょっとしたアヤだったとも考えられるでしょう。
後藤に勝利した零が得たものは
そして、零は後藤に勝利する過程で、自分を支えてきたものが「将棋」そのものであることに気づきます。
それは幸田家を破壊し、今まさに川本家をも破壊しようと絶望した零にとって、大きな拠り所となりました。
「男子三日会わざれば刮目してみよ」ということわざがありますが、まさに零にとって後藤戦はそれそのもの。
後藤戦に勝利した零は、さまざまな言葉で周囲の人々を救い、結果的に後藤や香子すらも幸せに導いていきます。
もしかしたら零の将棋の本質は、周りの人々を幸せに導くもの、なのかもしれません。
それはこの一局で零が人間的な成長を果たした結果から導き出されました。
父親に対する三姉妹の決心までに迫る
川本三姉妹の枚に突然現れた父、誠二郎。妻子を捨て出ていったはずの彼は、三姉妹のやさしさに付け込んで復縁を迫ります。
その理由は零によって看破されますが、なぜ零は誠二郎の素性を知っていたのでしょうか。
零は誠二郎の元にスパイを送っていた?
この時点では獅子王戦トーナメントの真っ最中ですから、零に誠二郎の素性を調べる余裕はありません。
しかし、零が彼の元にスパイを送っていたとすれば話は通ります。スパイというと仰々しいですが…ようは興信所です。
零の年収は前年で790万円とされています。
興信所の身辺調査は1日5万~10万円が相場のようですが、これといって趣味も見当たらない零なら融通は利くでしょう。
三姉妹の父親である誠二郎の心理とは
しかし、零に「クズ」とまで父親をこきおろされた三姉妹は、零を拒絶します。
この出来事は零にとっても三姉妹にとっても大きな転機となりました。
零は自分の生きざまを将棋に見出し、三姉妹も自分たちの困難に決着をつけるため、父親と向き合うことを決心します。
誠二郎が三姉妹の前に現れたのは、中古自動車販売店を解雇されたことがきっかけでした。
社員寮を追い出されたあとの住みかとして、あかりたちの家に目を付けたのです。
ただし、誠二郎にとって祖父である相米二は目の上のたんこぶだったはずですが、あかりさえ抱き込めばどうとでもなると思っていたのでしょう。
しかし、あかりたちは遊園地を最後の楽しい思い出として、彼に決別を告げます。