出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B01M0DKCW3/?tag=cinema-notes-22
元刑事で犯罪心理学を専門とする高倉と、サイコパスで不気味な西野の隣人同士が織りなす殺人劇『クリーピー 偽りの隣人』。
一家失踪事件を元に話が展開し、香川照之が演じる西野がまさに狂っていて、観ているこちらはその精神が理解できません。
それだけにこの作品には多くの疑問点が残っているようです。
まず映画内で何度か出てくる注射と高倉夫婦が食べたクッキーの成分。
人の精神を左右するあの注射とクッキーの成分は何なのか気になります。
また本多家の一家失踪事件について、なぜ早紀だけは西野に狙われなかったのか。
さらにその西野は、どうやら家の立地に関して異常に関心が高いようですが、作中でその理由は説明されていませんでした。
今回は「注射とクッキーの成分」「早紀が殺されなかった理由」「家の配置へのこだわり」を考察してみたいと思います。
「魅力的」な注射の正体
本作で西野の娘である澪や高倉の妻である康子が打ち、打たれる注射が人の精神に大きく働きかけるものであることが示されています。
注射を打たれると、どうやら意識がもうろうとなり、冷静な判断ができず、西野の思い通りの行動をしてしまうようです…
康子にとっては「魅力的」に映る
何度か注射を打たれている康子が、澪の母親の遺体を地下室で見つけたシーン。
注射の影響と目の前の遺体に気が動転している様子の康子に、西野はこのように語りました。
もし辛くなったらいつでも打ってあげるから
引用:クリーピー 偽りの隣人:/配給会社:松竹
この言葉に康子ははっとしたように顔を上げます。つまり、康子にとって注射は非常に魅力的なものなのです。
意識がもうろう、自我とは別に魅力的に映るものと言えば、薬物の類。
澪の母親が地下室で初登場したシーンでは、澪は苦しそうにしている母親に注射を打ってあげます。
その時の様子や、注射を打った後にだいぶ落ち着いている様子から、注射の中身が薬物の類といえるでしょう。
提供者への依存と服従
先ほどの康子がはっと顔を上げるシーンで、はっきり顔は映っていませんが、顔の上げ方から明らかな「希望」が感じ取れます。
また、顔を上げっぱなしでじっと西野を見つめる康子は、薬物を提供してくれる西野に依存していたと言っていいでしょう。
だからこそ、旦那の高倉の言葉は聞かず、西野の望む行動(高倉に注射を刺す)をするのです。
康子から見れば、魅力的なものを提供する西野には逆らえず、いわゆるマインドコントロールまでされている段階と見て取れます。
西野の「人をコントロールする力」は、康子の場合このような形で発揮するのです。
一発と複数回では程度が違う
(今から考察することは、決して薬物が一度くらいなら大丈夫、と解説しているわけではありません。)
康子の腕に残された注射痕が映し出されたシーンでは、すでに康子は何度か注射を打たれていました。
つまり、もう何度も薬物に侵されているのです。一度目はまだ、時間が経てば何とか回復しました。
しかしまた魅力的に感じ、回数を重ねるごとに意識がもうろうとし、冷静に判断できなくなる状況は深刻になります。
最終的にはそれから抜け出せなくなる。これはまさに薬物を打ち続ける過程と同じです。
クッキーの謎
高倉が康子に注射を打たれ、西野の地下室のベッドで横になっていると、澪が入ってきてクッキーを康子に渡します。
何も言わず入ってきてクッキーを渡し、出ていった後、康子と高倉はクッキーを口にしました。
その結果なのか、西野を殺す直前に高倉は正気に戻っています。おそらくクッキーを食べた結果ですが、詳しい事が語られていません。
「一時的」に正気を取り戻す
康子に注射を打たれた高倉は意識を失い、以後うつろで死んだような目となり、薬の症状が出ていました。
クッキーを食べてからは、車の中で正気を取り戻したのか、西野を殺す直前には元に戻っています。
このことから、クッキーは薬物の症状から意識を回復させる効果があり、澪はそれが分かっていたから夫婦に渡したのです。