出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07XZ8JRL6/?tag=cinema-notes-22
映画「ヒミズ」は2012年に公開された古谷実原作の日本映画です。
東日本大震災から1年後ということもあってか原作とかなり設定が変わったことが賛否両論となりました。
悲惨な家庭環境から「悪」に身を窶しかけた住田の痛ましい物語となります。
本作の受賞歴は以下の通りです。
2012年映画芸術日本映画ワーストテン2位
第68回ヴェネツィア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/ヒミズ_(漫画)#映画版
このように文芸面での評価は芳しくなかった本作ですが、二人の演技合戦は見事に盛り上がりました。
本稿では住田が自殺できなかった理由を中心に考察していきます。
また、2人のその後や住田が殺した父に「起きろ」と叫んだ心情を見ていきましょう。
普通・平凡とは何か?
「ヒミズ」を見ていく上で必ず出てくるキーワードは普通・平凡です。
住田はその特殊な家庭環境故尋常ではないレベルで普通・平凡への憧れを持っています。
彼にとって普通・平凡とは何なのでしょうか?
迷惑をかけないこと
住田の家庭環境から鑑みると住田にとっての普通・平凡の基準の一つは「迷惑をかけないこと」です。
何故ならば彼の両親は暴力団に借金ているパチンコ三昧の父に家事・育児を放棄し浮気蒸発した最低の母。
育児放棄だけならまだしも借金に浮気とまるで迷惑が服を着て歩いてるようです。
彼は事ある毎に「迷惑をかけないこと」を大切にしていますが、それは彼の両親の杜撰さから来るものでした。
「特別な人間」と思わないこと
住田にとって度々心の中で引っかかっていたのは「特別な人間」の定義でした。
彼にとって特別な人間とは限られた一握りの選ばれた人である、というこれ自体はままありがちです。
しかし、決定的に違ったのは「普通」の人が「特別な人間」と思い込むことが許せないということでした。
ここは中々人間の心理として面白い部分を突いていて、人間誰しも自分の安全を一番に考える生き物です。
そして誰も彼も必ず奥底に「自分は特別である」という優越感を持ち、人を見下したがります。
そうした人間の歪んだ潜在意識の気持ち悪さを住田はきっと嫌っているのでしょう。
目立たないこと
そして何より住田にとっての普通・平凡とは「目立たないこと」にあるのではないでしょうか。
実際に彼はこう口にしています。
目立つことでしか存在価値を示せないなんてはずかしい
引用:ヒミズ/配給会社:ギャガ
日本では「出る杭は打たれる」が特にありますが、この台詞はその意味で正鵠を射ています。
普通・平凡であることは目立たない、即ち集団に埋没して存在感を消すことを意味するのです。
だからこそヒミズ=秘密が住田にとっては一番難しく一番尊い普通・平凡の定義なのでしょう。
住田が異様に執着する普通・平凡は大別するとこの3つに集約されます。
二人のキーパーソン
「ヒミズ」で普通・平凡への憧れを持つ住田ですが、そんな彼にも数少ない心許せる人達が居ました。
それが茶沢と夜野です。果たして彼らはどのような影響を住田に与えたのでしょうか?
ストーカー一歩手前の茶沢
原作と大きく造形や扱いが異なったのが茶沢景子でした。