出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B06XBV3G55/?tag=cinema-notes-22
映画64-ロクヨンは当時話題となった前後編二部作として瀬々敬久を監督に迎え2016年に公開されました。
前編は5月7日に、後編は6月11日にそれぞれ封切られています。
日本アカデミー賞で最優秀主演男優賞に佐藤浩市、新人俳優賞に坂口健太郎が選ばれました。
他にも作品賞・監督賞・脚本賞・音楽賞など10部門で受賞した大ヒット日本映画です。
引用: https://ja.wikipedia.org/wiki/64/ロクヨン
警察の闇に隠された幸田メモの行方や実名報道に絡むそれぞれの思惑などを徹底考察していきましょう。
隠された幸田メモの行方
この作品の中心にあるのは『幸田メモ』です。
それをめぐり様々な思惑が蠢きストーリーに深みを持たせています。
正義の象徴である警察が抱える闇の象徴が『幸田メモ』なのです。
隠すよう指示した人物
当時県警捜査一課の刑事だった幸田は内部告発文書を刑事部長の社宅に投函しています。
刑事として最終目標である刑事部長を信じていたということでしょう。
そもそもの隠ぺいは自宅班の責任者である捜査一課特殊犯捜査係の漆原係長によるものです。
それに追従した柿沼は捜査一課に留まり、漆原本人は地方警察の署長になっています。
これは『隠ぺいをした』ことに因る功績ではなく監視です。
柿沼は警備員として働く幸田を監視していました。
その柿沼も実は監視対象です。いったい誰が指示しているのでしょうか。
それは歴代の刑事部長に他なりません。
幸田メモはどこにある
幸田メモの原本は刑事部長の自宅に保管されていると推察できます。
その存在を知っているのは歴代の刑事部長と捜査一課長、当時の自宅班4人と現在の専従班上部、そして『雨宮芳男』と『望月』です。
県警の威信と人事を吹き飛ばすほどの『幸田メモ』を署内に保管するとは思えません。
それは警察内部の縄張り争いに関係しています。
歴代の刑事部長が申し送りと共に手渡しで引き継いでいると考えたほうが妥当です。
それぞれの思い
秘密を守りたい者と暴きたい者などそれぞれ違う立場での人間模様も目が離せない作品です。
対極にあるものによる縄張り争いや、啓示の矜持など視点によって悪人と善人が入れ替わる面白さがあります。
二渡真治の暗躍
重要な場面で必ず顔を出すのが二渡です。
彼の立場は県警警務部警務課の調査官であり階級は三上と同じ警視ですが、警視になったのが早かったので警務部では三上の上司となります。
彼は明らかに『幸田メモ』を探っていました。
警務部長の指示でしょうか。
むしろ県警本部長からの隠密命令と考えたほうが自然です。
それは、記者たちが本部長の部屋に押し寄せたのを三上たちが体を張って止めたときのシーンでわかります。
県警本部長は本庁からのキャリア組ですし、昇格復帰を目論んでいるのです。
そんな時に『幸田メモ』が世に出るようなことになれば出世に支障をきたすと考えてもおかしくありません。
彼の狙いは『幸田メモ』を永久抹殺し、刑事部を中央から掌握することでしょう。
そしてそれは今の形態を守りたいと考えている二渡とは真逆の思想です。
ではなぜ二渡は本部長の指示に従っているのでしょうか。
それは、狙いは違えど『幸田メモ』が必要なことは合致しているからです。
本部長に従っている振りをして動きやすい立場を確保している二渡、相当な切れ者といえます。
ロクヨン自宅班
漆原は自宅班責任者であり隠ぺいを指示した張本人です。
刑事部長は漆原の判断を追認していますので、彼にとって『幸田メモ』は幸運のメモになりました。
ひとりで抱え込まなくてはいけなかった秘密を刑事部の上層部が共有してくれたのです。
署長就任で定年を迎えるという道を与えられ『魂を売った』男の末路はどのようなものでしょうか。
雨宮芳男
たった7日間の昭和64年から動けないでいる被害者の父親は、当然『幸田メモ』の存在を知っています。
知っていて言わないのは警察組織に絶望しているからです。