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「5パーセントの奇跡 ~嘘から始まる素敵な人生~」はサリヤ(サリー)・カハヴァッテの半生を描いた伝記映画です。
先天性の病気で視力の95%を失うも、一流のホテルマンになるという嘘のような真実が思わぬ感動を呼びました。
今でこそ一流のビジネスパーソンとして大活躍中のサリヤですが、その裏には数々の挫折があったのです。
マルク・ローテムント監督渾身の一作として、無冠ながらも非常に良質の王道作品でありました。
さて、本稿ではサリヤが最後にホテルの合格を蹴った理由を考察していきます。
また、一度はサリヤを振ったはずのラウラが心変わりして戻ってきた真意とは一体何だったのでしょうか?
ホテルの合格を蹴った理由
「5パーセントの奇跡」のラストではサリヤがホテルの最終試験に合格したのに蹴ってしまいます。
あれ程ホテル業界で働くことを熱望したのに、どうして辞めてしまったのでしょうか?
ネタバレも含みながら、じっくり掘り下げて考察していきましょう。
親友マックスの存在
一番の理由は面接の時からずっと一緒だったマックスという最高の親友が居たからです。
マックスはサリヤとは正反対に仕事にもやる気がなく、真面目なサリヤとは正反対の軟派な青年でした。
しかし、真面目に頑張るサリヤに絆され、彼の持つ障害を理解し落ちかけた時は励ましてもくれるのです。
サリヤは劇中自身の障害も含め何度も挫折を経験しますが、マックスは彼を馬鹿にしたことは一度もありません。
サリヤにとってマックスは自分の弱さも強さも曝け出して等身大の自分で居られる存在なのです。
マックスと共にお店を開業するという選択肢を取ったことにそのことがよく表現されています。
自分を偽ることの後ろめたさ
二つ目に挙げられるのは面接から先天性の病気を隠し続けていたことへの後ろめたさです。
サリヤが一番それを強く実感したのは恋仲になったライラに事実を話して振られた時ではないでしょうか。
彼女に振られてから暫くのサリヤは薬にまで手を出し、仕事にも悪影響が出ての大失敗をしてしまいます。
正にどん底というどん底を経験しますが、これは事実を隠し続け本当の自分から逃げた代償です。
だからこそ、彼はずっと周囲を騙し続ける形で働き続けることへの罪悪感が裏にあったのでしょう。
真面目なサリヤですからそれで本当に幸せな人生が歩めるのかと疑問に感じても不思議ではありません。
「どんな仕事をするか?」よりも「誰と仕事をするか?」
そんなサリヤとマックスの友情の在り方と生き方は幾つかの教訓を教えてくれました。
それは「どんな仕事をするか?」よりも「誰と仕事をするか?」の方が遥かに大事だということです。
仕事はあくまでも仕事、そこに個人の好き嫌いが入る余地はありません。
しかし、だからこそ誰と働くか?が一番大事で、仕事が続くか否かの原因は殆ど人間関係にあります。
サリヤだって共に働きたいと強く思えたのはマックスがいたからこそではないでしょうか。
最終試験を受けた理由
最後に店を開くと決めているのなら、気になるのは何故最終試験を受けたのか?ということです。
サリヤは恐らく自分の人生そのものをこの最終試験に賭けていたからではないでしょうか。
つまり最終試験は研修卒業だけではなく、何よりサリヤが真実を手に出来るかがかかっています。
様々な障害や挫折を経験し偽らずに生きていく大切さを学んだサリヤの次の人生へのステップです。
合格し一流のホテルマンに認められてこそマックスと共に店を開けると思ったのでしょう。
それだけの重みと説得力がこの最終試験には込められていたのです。
ラウラの心変わり
ずっと視覚障害を隠し続けていたサリヤを一度は手酷く振ったのに何故か戻ってきたラウラ。