出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B00FYKYHJ6/?tag=cinema-notes-22
映画「ツナグ」は辻村深月の著した連作短編小説を原作に持つ日本映画です。
平川雄一朗監督・脚本に主演は今や国民的俳優として名高い松坂桃李を据えて作られています。
死者と生者を一度だけ会わせる「ツナグ」で非常に複雑なドラマが描かれました。
その内容の奥深さは多くの人の感動を呼び、映画観客動員ランキング第一位を獲得しています。
また、以下の賞を受賞しています。
第36回日本アカデミー賞 新人俳優賞
第22回日本映画批評家大賞 主演男優賞(松坂桃李)
第34回ヨコハマ映画祭 最優秀新人賞(橋本愛)引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/ツナグ
本稿では多くの考察・論争を生んだ御園の伝言の意味をネタバレ承知で徹底考察していきましょう。
また、キラリが土谷に頼みごとをした意図や歩美の両親の死と鏡の関係も併せて見ていきます。
ツナグとは
映画「ツナグ」を理解する上でまず「ツナグ」とは何かを理解しておかなければなりません。
ツナグとは死者と縁ある生者を一度だけ対面させる使者を指し、本作ではアイ子と歩美のことです。
しかしその死者が生者と会うことを拒否した場合その一度の機会すらも失われてしまいます。
非常に厳しいルールですが、こうでもしないとご都合主義的な設定になりかねないからでしょう。
本作の歩美は動きがないので主人公というよりは狂言回しに近い立ち位置だと思われます。
御園の伝言の意味
「ツナグ」のハイライトとして語り草になっている御園の伝言の意味を考察していきましょう。
御園奈津と嵐美砂は親友でありながら、同時にある種の「ライバル」でもありました。
果たして御園は嵐に何を伝えたかったのでしょうか?
罪を背負わせる
御園が嵐に残した伝言とは以下の内容でした。
道は凍ってなかったよ
引用:ツナグ/配給会社:東宝
何故こんなことをしたのかといえば、それは御園の嵐に対する復讐ではないでしょうか。
御園は嵐が自分を死なせた張本人であることが「嵐、どうして?」という遺言からも伺えます。
御園は嵐が自身の罪を告白せず、楽しい話しかしなかったことへ憤りを感じていたのでしょう。
嵐がきちんと罪を告白してくれればきっと御園は笑って赦してくれたのかも知れません。
でもそうしなかったから御園にとって嵐と自分の友情はその程度だったのかと落胆したのでしょう。
親しき仲にも礼儀あり、幾ら親友でも赦せること赦せないことの違いはあって当然です。
実は陰険な御園
よく女の友情は見かけだけで脆いものといわれますが、御園と嵐も例外ではありません。
御園は嵐程感情を表に出さないだけで、実際はそんなに良い人ではないことが言動を追うと判ります。
特に演劇で同じ主演に立候補した際、御園は部員達にこう話していたのです。
私には絶対敵わないと思う
引用:ツナグ/配給会社:東宝
こんなことを本人が居ないところで部員達に陰口するなどまともな人間のすることではありません。
上記した伝言もそうですが、本人に直接ではなく間接的に他者を介していうのが非常に陰険です。
表に出さないだけで御園は嵐が思っているより遥かに狡くて汚い人間なのではないでしょうか。
御園の嫉妬深さ
表面上は嵐の嫉妬が目立ちますが、実は表に出さない御園の方が遥かに嫉妬深いのかもしれません。
この辺り大野いとが非常に絶妙な含みを持たせた演技で魅せるのですが、決定打となったのは伝言のくだり。
御園は歩美が着ているコムデギャルソンのコートを褒めたとき、嵐が全く同じ話をしたことに愕然としました。
恐らく御園は何かにつけて自分が嵐よりも優位に立っていなければ気が済まなかったのかも知れません。
自分がやっと好きな人のことを褒められたのに、親友兼ライバルが先に同じ話をしていたらどうでしょうか?
決していい気はしないはずです。でもそれを直接出してしまったら嵐に嫌われると思っていたのでしょう。